山田リオ
彼岸花が咲いている
そこに立ち、花を見おろす人
その顔に、地に咲く花の色が反映して
喉や顎、鼻腔のあたりに
やわらかい赤橙の光が
やわらかい赤橙の光が
その人を見あげる彼岸花が
顔の凹凸をうっすらと照らすとき
背後に見える空はもう暮れかけて
どんどん青く黒くなって行く
足もとの花からさして来る光だけが
その貌を紅く照らして
さまざまな思いも
彼岸花が、あたり一面に
広がり、咲いていたことも
なにもかも忘れてしまって
今はただ、薄闇のなか
赤橙の夕映えだけが
立ち尽くす人の顔の上で
ゆっくりと衰え
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