2024年4月24日水曜日

さまざまの事おもひ出す桜かな    松尾芭蕉 (1644~1694)



© rio yamada



2024年4月22日月曜日

『He』2004

 ■2004/11/30 (火) 

                                         山田リオCopyright ©2004RioYamada


そのホームレスの男に会ったのは

ニューヨーク マンハッタンの

ずっと下の方の 東側 道も狭い

豪華でも 美しくもない 一角

そういう街のコーヒーショップで

わたしは コーヒーを飲んだり

雑用や 書き物なんかをしながら

午後の数時間をすごした


彼は コーヒーショップのすぐそば

歩道のすみっこに 彼の全財産である

襤褸包みといっしょに 住んでいた 

つまり そこが 彼の住所だった 

先週の ニューヨークタイムス

ヘミングウェイの 小説 

彼は いつも 何かを読んでいた

彼と私は いつも 何も言わなくても  

二人だけの暗号を 目と目で交わした

そう 彼と私は 同類だったんだ


彼が死んだ日

ニューヨーク市のトラックがやってきて

彼を襤褸包みといっしょに運んでいった

きれいになった 日暮れの舗装道路の上

貧しい人もそうでない人も そこに立ち

お互いに 話したこともない隣人たちが

みんな それぞれ ロウソクを灯して

昨日まで そこに住んでいた

あの ホームレスの男のための

ロウソクの炎が 夜風にゆれているのを

最後の一本が消えてしまうまで

見つめていた  


2024年4月18日木曜日

はっけん

8/4/2019           山田リオ © rio yamada

ずっと 
じぶん のことを
にんげん だろうと 
おもっていたが
じつは じぶんは 
だんごむし 
だったと
きがついた
これ はっけん

はい
わたし だんごむしですが
なにか?
© rio yamada


2024年4月9日火曜日

戯曲

夢を見た 花に嵐 の 早朝のことだった
夢の中で 自分は 以前に書いた 戯曲 
つまり 舞台演劇の台本を 書いたらしく
それを どこに置いたのか 忘れているらしい
本棚にも コンピューターにも 見つからない
夢の中で ああ そうだった と 気がつく
あれは 頭の中に 入れて置いたんだ と
記憶していたことを 忘れていた ということらしい
やっと 安心して 眠った そういう夢だった
本当に目が覚めた時 あれは  どんな戯曲だったのか 
全く 記憶にない 
いずれにせよ それは 花に嵐 の朝だった
                  山田リオ
© rio yamada



2024年4月5日金曜日

花の朝

自分を苦しめ 悩ませているのは

ほかならぬ 自分自身

それに 気がついた 花の朝

              山田リオ

© rio yamada


2024年3月22日金曜日

光と水と空気

不思議なんだけどね
詩は 声に出して 何度も読んであげると
気がついた時には 育っているんだよ
詩は 植物に似ているんだ
植物は 光と水と空気をあげると 育つ
詩は 何度も声に出して ゆっくり読んであげれば
ちゃんと 育つのさ。     
           山田リオ 2024© rio yamada
© rio yamada


2024年3月21日木曜日

悲しいギター 2005

 ■2005/08/13 (土) SAD GUITAR


中国系アメリカ人の女性詩人、マリリン・チンの「サド・ギター」です。

「悲しいギター」        
                     マリリン・チン 訳:山田リオ

盲目の移民よ
あなたはこれが理解できるか
触る、木、
これは木
そして火ではない、これは
土で、木ではない
これは自然界の水だ

お茶がはいって、ご飯が炊ける
あなたが去って十日間
わたしはよろめき、つまずいて
連想ゲームをしてみよう
フラワーに、韻を踏むのは
バワー、シャワー、それとも、パワー?

見知らぬ人よ、中国女を
愛したことがありますか?
彼女の心は菊の花
そこには深い峡谷がある

おお、曲がった杖、憤怒!
私はここに、あなたの中に、あなたなしで
ねっとりした闇をまさぐり
霊魂と怒りを、引きずり出す

わたしはロープを持たない女
逃げてしまった馬を追う
わたしの馬車の馬はいななき
蹄の音は略奪する

あなたが聞こえる、でも見えない
あなたに触れる、でも、遠い
淋しさについて、学んだことは
弦を爪弾く三本の指
全てがわかる、あの心臓---
悲しいギターの、芯の暗闇。copyright2005© rio yamada

2024年3月6日水曜日

感謝

 山田リオの詩集、「ときのおわり 」が、

第74回 H氏賞の候補作品に選ばれました。

みなさま、どうもありがとうございました。 

これからも、どうか宜しくご指導下さい。   やまだ

© rio yamada


2024年2月23日金曜日

万太郎


冬籠つひに一人は一人かな

佇めば身にしむ水のひかりかな
 
雲の峰あたり人かげなかりけり

わが胸にすむ人ひとり冬の梅

何か言へばすぐに涙の日短かき

汝も我も凡夫の息の白さかな

こしかたのゆめまぼろしの花野かな

             久保田万太郎 (1889~1963)

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2024年2月9日金曜日

本棚

 詩人の瀬崎祐さんが、ブログ「瀬崎祐の本棚」に、

詩集「ときのおわり 」の感想を掲載してくださいました。

このページの右側、「お気に入り」欄にあります。

ありがとうございました。

© rio yamada





2024年1月29日月曜日

正解

「人間の愚かさは、あらゆることに正解を求める姿勢に起因する。

小説の知恵は、あらゆることに疑問を持つ姿勢に起因する。」

               ミラン・クンデラ (1929~2023)  訳:山田リオ

© rio yamada


2024年1月23日火曜日

遠ざかるスケートボード

 

■2010/07/02 (金) 

            山田リオ

その人はこっちを向いたままスケートボードに正座している
いつものあの表情を保ったままのその人を乗せて
スケートボードは徐々に加速しながら遠ざかる
こっちを向いたままのその人の表情は変わらない
正座したままだんだん遠く小さくなっていって
とうとう見えなくなったむこうの
遠い空には白い雲
永い人生の中のほんの一瞬すれ違い
ほんのわずかな言葉を交わしただけで
分かり合えたような気になっただけで
遠ざかり小さくなりもう見えなくなったあの人とは
ほんの少しだけ言葉を交わすことはあったのだが
お互いの目を見ることもなくわかれて行った無数の人たち
見上げる空には白い雲   
Copyright©2010RioYamada

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