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2018年4月15日日曜日

夜の雨 2004

2004/11/22 ()

今晩は雨ですので、特別に掲載しました)

 今晩は雨で、さっき、外を見たらまだちゃんと雨が降っているので、非常に心が落ち着きます、そして雨がうれしくて眠る気にならないので、もうしばらく起きていることにします。

 損と得、ほめられるのと悪口言われること、楽しいことと苦しいこと、好きと嫌い、嬉しいのとイヤナの、全てのことには両方があって、でも、どれもがずっと変わらずにあるのではなくて、全部がかならず変わります、全部がかならず消えます、なくなります。

いいことも悪いことも、体も心も、それ以外のすべて、なにもかも、あらゆることも、あらゆる物も、すべてが、いつかかならず変化し、消えてなくなります。

今生になにも願わず、執着せず、そして来世なんてものにも期待せず、望まず、自分にも他人にも誰にも、何一つ望まず、ただ生きて、そして死んでゆく。
そういうふうになたら、なんてことを考えています。    
                        
                       
■2004/11/22 (月)  Copyright ©2004RioYamada     

 山田リオ

電気の消えた部屋の
窓の外からは
雨の降る音が聞こえてくる
あたたかいベッドの中に横たわって
雨の降る音を聞いている
それは
無数の雨粒が
空の高いところから落下してきて
それぞれの粒が
屋根土石植物水家ガラス
いろんなものの上に落ちて
そしてそれぞれが雨粒から
水というかたちに戻る音なのだが

そうやって聞いていると
わたしが
野の獣や鳥になったような気持ちがする
なんとかして濡れないように
暗い夜のなかで
それぞれの場所でうずくまって
生きようと
朝の光を震えながら待っている
朝が来て
まだ生きていれば
夜の間に降ったきれいな水を飲むことだってできる

あたたかいベッドのなかに横たわって
雨の音を聞いていると
いつかホームレスになる日のことを
想像する
ホームレスになったら
やっぱり
野の獣や鳥のように
真っ暗な空を見上げ
とこか安全なやさしい樹木の陰で
雨に濡れてうずくまり
自分を抱きしめながら
朝が来ることを祈るんだろう
そして朝がきたら
木の葉なんかにたまった雨水を飲んで
陽光に光る梢を見上げながら
なにかに
朝まで生きられたことを
感謝するんだろう
  
                                             Copyright ©2004RioYamada

 

"Night Rain"    Rio Yamada
                   
From outside the windows
Of this dark, quiet room
I can hear the sound of falling rain

Lying on the warm bed
Listening to the sound of the falling rain
The sound of countless raindrops
Falling from a very high place in the sky
After traveling a vast distance and then

Each drop will hit various things on earth
Such as roof, soil, stone, plant, water or glass
Then, all going back to the original form of water

As I listen, lying in the warm bed
I feel as if I became a wild animal or a bird
Trying not to get wet, crouching 
Trying to stay alive, waiting all night 
And if and when the morning comes, and if I am still alive
I might be able to even drink clear rain water

As I keep on listening to the sound of the falling rain
I imagine the day that I will become homeless
And if I become a homeless 
I will probably find a safe place under a kind tree
Still getting wet, but crouching and hugging myself
Praying for the morning to come  

If the morning really comes
I will maybe lick water off wet tree leaves
Looking up to the treetops glistening in morning sunlight
I shall probably thank something
For being able to have lived
Through the night rain.
                               Copyright ©2004RioYamada
 

2013年1月25日金曜日

雨よ



砂漠に住んでいると、雨は貴重です。
いつも気が付けば、「雨にならないかなあ」と、
言葉に出さなくても、そういうふうに思っている自分がいます。

「夜の雨」を再掲載したら、すぐに雨になりました。
不思議。
おとといの夜から降り出して、今日で三日目の雨です。

もう十一年間、この詩日記を読んでくださっているみなさん、
十一年も、一緒にいてくださって、ほんとうにありがとうございます。     山田

2013年1月22日火曜日

夜の雨、死刑、彼岸 再録



■2004/11/22 ()
                   山田リオ

電気の消えた部屋の
窓の外からは
雨の降る音が聞こえてくる
あたたかいベッドの中に横たわって
雨の降る音を聞いている
それは
無数の雨粒が
空の高いところから落下してきて
それぞれの粒が
屋根土石植物水家ガラス
いろんなものの上に落ちて
そしてそれぞれが雨粒から
水というかたちに戻る音なのだが

そうやって聞いていると
わたしが
野の獣や鳥になったような気持ちがする
なんとかして濡れないように
暗い夜のなかで
それぞれの場所でうずくまって
生きようと
朝の光を震えながら待っている
朝が来て
まだ生きていれば
夜の間に降ったきれいな水を飲むことだってできる

あたたかいベッドのなかに横たわって
雨の音を聞いていると
いつかホームレスになる日のことを
想像する
ホームレスになったら
やっぱり
野の獣や鳥のように
真っ暗な空を見上げ
とこか安全なやさしい樹木の陰で
雨に濡れてうずくまり
自分を抱きしめながら
朝が来ることを祈るんだろう
そして朝がきたら
木の葉なんかにたまった雨水を飲んで
陽光に光る梢を見上げながら
なにかに
朝まで生きられたことを
感謝するんだろう
  
                                             Copyright ©2004RioYamada




■2004/11/19 (金) 死刑
「死刑」
          山田 りお

死刑になるというそのとき
さいごに一本のタバコを吸わせてくれるということを聞いた
死刑になる人は
生きたいという願いはかなえられないが
いまから死ぬんだということを
前もって知ることができる
そしてそれはぜいたくなことなのかも知れない

死刑にならない普通の人は
自分がいつこの世を去って
あちらがわに行くのかということを
知らされずに
毎日を生きていく
今晩眠っている間に逝くのかもしれず
明日の朝に事故や災害で死ぬかもしれず
あと108年間長生きするかも知れないが
それを前もって知ることが許されないので
占い師やサイキックやいろんなものに
みんなはお金を払って
少しでも安心しようとする

わたしの最期のとき
わたしはタバコなんか欲しくない
そのかわり
どこかの山奥の谷川をさかのぼり源泉まで行って
冷たいきれいな湧き水を飲みたいかもしれない

薪と釜で炊いたばかりのあたたかいご飯を
梅干や海苔やちりめん山椒や焼いた塩鮭や明太と
食べたいかもしれない

何十年もの間毎日聴いてそれでも
まだ聴きたりないあの大切な音楽を
もういちど聴きたいかもしれない

林のなかの湿った空気を呼吸し木々の匂いを嗅ぎ
梢をわたる風の音を聞き
波打ち際の濡れた砂の感触を足の裏でたしかめ
海風と汐の匂いを体で吸い込みながら歩き

ああまだまだいくらでも浮かんでくるけれど
そのなかから
たった一つ選ばなければいけないとしたら
それはとてもできないことです
                                                    Copyright ©2004RioYamada



■2004/11/30 (火) 彼岸
『彼岸』
                      山田 りお

眠りから引き剥がされるようにして
目が覚めたとき
口の中に苦い味が残っていて
自分はバスの座席で眠っていたようだ
バスはからっぽでほかには誰もいなくて
ふらつく足で立ち上がりバスをおりると
そこは六番街の55丁目あたりのようで
白く雪に覆われた道をバスは
セントラル・パークの方向に走り去る
なぜバスを降りてしまったのか
考えてもよくわからなくて
道に積もった粉砂糖よりも細かい雪が
風に吹き上げられて渦をまいているほかは
人っ子一人いないし車もまるで通らない
日暮れのような夜明け前のような薄明かりの中で
寒さに震えて立ち尽くしている
いくら待ってもバスはもう来ない
この道を歩き続けても家に帰れるとは思えない
どっちの方向に自分の家があるのか
いくら考えてもわからない
ああもしかしたらこれは
夢なのかもしれない
目の前には大きな大きな川があるようで
これはきっとあのハドソン河だと思う
真冬だから河には白い流氷が溢れていて
氷の隙間には真っ黒な冬の水も流れていて
この流氷の上を歩いていったら
無事に向こう岸に着けるような気がする
ああそうだこれが「彼岸」という言葉の意味なのだと
心の中で納得して揺れる氷の塊を踏みしめ
風が強く雪も激しく前がよく見えないのだが
一歩一歩少しずつ進んでゆくのだ
気がつけば自分の前を
自分と同じような海兵隊の防寒コートを着た男が
同じようにうつむいて
氷の上を一歩ずつ歩いて行くのが
雪のむこうにうっすらと見えて
その背中がなんとも言えずなつかしくて
涙がこぼれるような気持ちがするまもなく
もう熱い涙が頬を流れて
ああこのなつかしさを「サウダージ」と言うのだった
お父さんその背中は遠い昔ぼくを捨てて行った
ぼくのお父さんですね
風にゆれるこの流氷の上で
あなたの背中しか見えないけれど
会ったことがなく顔を知らないけれど
その吹雪に霞む背中とこのサウダージそれは
まぎれもなくあなただという証拠です
逃げることはありませんよお父さん
ぼくはあなたを恨んだこともないし
とっくの昔にあなたを許しているんですから
ぼくはただ
あなたのとなりにほんのすこしの間
座っていたかっただけなんです
ただ
それだけのことなんです
ほんとうです

                         Copyright ©2004RioYamada