2019年11月30日土曜日

小舟

rio yamada photo

どこまでも流れ下って行く
金色の光の中を漂いながら
人生が夢でないのなら 何?

 「鏡の中のアリス」より 山田リオ訳
  ルイス・キャロル(1832~1898) 

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「鏡」の最後の最後の三行です。

アリスは、いわゆる童話とは別の物だと思います。
子供向きに簡略化してはいけないし、もちろん、アニメにした物は、最も大切な部分が失われてしまっています。
そして、「不思議の国のアリス」も、「鏡の国のアリス」も、機会があったら原作を、英語で読んでいただけたら、と心から思います。 やまだ

2019年11月29日金曜日

Estate (夏)
      ブルーノ・ブリゲッティ(イタリア) 翻訳:山田リオ

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夏は 過ぎ去った口付けのように熱く
なくしてしまった恋でいっぱいだ
もう なにもかも忘れてしまいたい 夏

私たちをあたためてくれた 夏
それは素晴らしい夕日をもたらし
今はただ わたしを激しく焼く

やがて冬がめぐって来て
無数のバラの花びらは散り
雪がすべてをおおいつくして
束の間の平和を与えてくれる

花々に香りをもたらした 夏
私たちの恋を創造してくれた 夏
あの素晴らしい夏が去った今
残されたのは 心の痛みだけ

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イタリア人のブルーノ・ブリゲッティが作詞した「夏」は、
ブラジル人のジョアン・ジウベルトが歌って有名になりました。どうも、知らない言葉が多いなあ、と思ったら、ポルトガル語ではなく、イタリア語だったわけです。
イタリア語の歌詞をそのまま歌ったということで、ブラジルでは珍しい歌です。 山田

2019年11月25日月曜日

まぼろし

   (イルザオン・トア)
      詩:アウフレド・ジョセ・シウヴァ(ブラジル)訳:山田リオ

見てごらん あなたの眼から たった一日分の距離
ほんの少しの差で わたしは 愛を失ってしまった
いまは 全世界が ひどく悲しいだけの場所だから
それでも なぜか あなたは今も すぐそばにいる
もう あの ひそかな思いなんか捨ててしまおうと
そう思い切ることができた自分に 感謝していても
そう あの たった一人に向ける ひそかな思いが
でも あなたは それに 全く気がつかないままで
あなたのまぼろしの重さに 打ちひしがれている私
  

2019年11月23日土曜日

朝露

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雨と風の日々がつづいて 
やっと 陽がさしてきた 
いいことがありそうな朝

2019年11月17日日曜日

無言

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人は、時には、語らなければいけない。
無言が全てを語ってしまうのを避けるために。

      ヘルタ・ミュラー(1953~)

2019年11月14日木曜日

向日葵


ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり

             永井陽子(1951~2000)
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2019年11月12日火曜日

つわぶきの花


いくたびか時雨のあめのかかりたる
石蕗の花もつひに終わりぬ

       斎藤茂吉(1882~1953)

                                 時雨 (しぐれ)
        石蕗 (つわぶき)

2019年11月7日木曜日

茂吉


うつしみはついに悲しとおもへども
迫り来ひとのいのちの悲しさ

          斎藤茂吉(1882~1953)

2019年11月6日水曜日

初霜


門の辺の八つ手の霜を思ふかな

かどのべのやつでのしもをおもうかな

       久保田万太郎(1889~1963)


 

2019年11月5日火曜日


さあここであなたは海になりなさい
鞄は持っていてあげるから

         笹井宏之(1982~2009)

2019年11月3日日曜日

光る海

           山田リオ
rio yamada

海に出て行くというとき
豪華客船を選ぶ人がいる
決して沈まない そのまま一生 
安全安定の 船で行く旅

一方 少し大きな波が来たら
すぐに沈んでしまいそうな 小舟
そういう舟で 海に出る
そんな航海も ある

運悪く 小舟が転覆した時には
また別の小舟を見つけ 旅を続ける
毎日が冒険 明日はどうなるか わからない
でも 毎日が新しくて ドキドキする旅

そして 旅の終わりが来たら
「楽しかったね」「面白かったね」
そう言って笑えるような そういう
小舟の旅を 選ぶ人もいるんだよ

2019年11月2日土曜日

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あの猫のことを思い出している時間

             山田リオ