わが生はかくのごとけむおのがため納豆買ひて帰るゆふぐれ
辛うじて机のまへにすわれども有りとしも無しこのうつしみは
斎藤茂吉(1882~1953)
わが生はかくのごとけむおのがため納豆買ひて帰るゆふぐれ
辛うじて机のまへにすわれども有りとしも無しこのうつしみは
斎藤茂吉(1882~1953)
とくに、豊かな内容の原稿が来て、
それを、楽しみながらあれこれと考え、
書き、読み返し、書き直し、訂正し、
あれこれ工夫して書く時間は、本当に楽しい。
あっという間に時間が、日々がすぎて行く。
出来上がってしまって、原稿を送った後は、
大切なものを失ったようで、淋しい。
そんなことなら、もっと時間をかけて、
ゆっくりやるんだった、と後悔する。
でも、また仕事が来ると、
もう、楽しくて、どんどんやってしまう。
そして、仕上がってから、また、後悔する。
むづかしいものだ。
ところが、ときには、というか、しばしば、
送ってしまった後で、失敗に気がつく。
まったく、自分は、不注意で、愚かなやつだ。
しかし、後悔しても、もう、遅い。
でも、後悔。 やまだ
夢を見た。夢の中で、スコッチウイスキーを呑んでいる。
呑みながら、夢の中で、思い出した。
そうだ、Yさんが持ってきた、バーボンウイスキーのボトルがあったな。
夢の中で、そう思っている。
目が覚めてから、気がついた。
そうだ、Yさんは、もう、いないんだ。
バーボンがまだ少し残っているボトルを置いて、「また呑みにくるから」
そう言って、Yさんは帰った。
でも、Yさんは二度と来られなくなった。
あのバーボンのボトルは、あの時のまま、呑まずに置いてある。
Yさん、気が向いたら、また来てくださいね。いっしょに呑みましょう。 山田
しばしばもわれに虚ろのときありぬうしろにかならず猫が来てゐる
ひとつ気が付いたことがある。
それは、音楽を聞く時に、スピーカーをどこに置くか、と言うことで、
たまたま、ある位置に置いて、仕事をしながら聞いていると、非常に良い。
どういいのか、と尋ねられても、とにかく、いい、としか答えられないが、
まあ、そういうことだ。
で、その、最高のスピーカの位置は、自分の背後、真後ろ。
私の前にあるのは、PCのモニターとキーボード、そして背後にスピーカー。
正確に言うと、「背中の真ん中からまっすぐ後方」、およそ2m50cm。
それより近くても、遠くても、あまり良くない。そう言うことなのだ。
街角に黒き日傘をとぢる指 あなたの顔が思ひ出せない
大西久美子 「イーハトーブの数式」より
あの風のことは憶えている、
あのライラックの花も、あの灰色も、あの香りも、
あの歌も、そして、あの風も。
でも、あの天使が言ったことだけは、
どうしても思い出せない。
アレハンドラ・ピサルニクAlejandra Pizarnik(1936~1972) 訳:山田リオ