2012年7月30日月曜日

+++++++++++++++++++++++++++++++ 山田リオ

繰り返し読む文庫本の背がゆるんできて
放っておくとページがなくなったりするのが嫌なので
テープであちこち補強してみたが、この本の余命は短い
ぼくが去れば、この本を読む人は、もういない

一日物言わず、か。
毎日、何も言わないでいると、日本語も英語も
話す言葉をどんどん忘れていくようで、怖ろしくなる
でも一人言は言わない、歌ったりも、しない

病院でたくさんの人に触られたり、話しかけられたり
切られたり縫われたり注射されたり検査されたり
そうやって死んでいくのはたしかに、孤独死ではないのだろうが
ひとはやっぱり逝くときには、誰でも、一人で逝くのだ

村人たちが、引っ越したり、立ち去って、いなくなってしまった
そんな廃墟のような山村で一人、野菜をつくったりして
ゆっくりとめぐる季節のなかで終わっていけたら
これほど贅沢な旅立ちはない。それは孤独死なんかではない

雨音が聞こえる、ここには降るはずもない、日本の静かな雨の音が聞こえる
昼も夜も、雨音を聞きながら、草木と同じように、雨に濡れて
不平不満を言わず、他人の噂話をせず、世間のニュースも知らぬまま
草木や生き物たちのように、何も言わず、立ち去っていくことができたら。

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2012年7月5日木曜日


1954年のイタリア映画、「道」から一部抜粋。 山田訳。




阿呆「俺は無知だ。でも本は読める。おまえは信じないかも知れないが、この世に無駄な物なんてないんだ。たとえば、この小石・・
 
ジェルソミーナ「どの石?」
 
阿呆「どれでもだ。どの石にも、役目がある。」

ジェルソミーナ「なんの?」
 
阿呆「それは・・わからないけど、たとえば俺が全知全能だとしよう。でも、だれがいつ生まれて、いつ死ぬのか、俺はわからない。
誰にも、そんなこと、わからないだろう?
だからおれも、この石が何の役に立つかなんて知らない。
でも、この石はきっと何かの役に立つんだ。
どんな物にだって、役目があるんだ。
空の星にだってな。」     
   
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