2018年12月29日土曜日

冬日

きっぱりとした冬の寒さが窓の外にあります。
朝起きると、窓いっぱいの結露です。
この部屋は日当たりが良いので、
晴れていれば、午前中は徐々に暖かくなり、
午後の陽ざしが衰えると、
寒さが身に沁みてきます。 

いつも詩日記を訪問してくださって、
ありがとうございます。
読者は、ごくごく少なくて良い、と思っています。
きちんと読んでくださる方が一人でもいらっしゃれば、と。
永年の読者、藤さん、お元気でいらっしゃるでしょうか。
今も、心おだやかで居られることを、お祈りします。
                   やまだ

PS。アダンソンハエトリグモ(5mm)も元気でおります。
毎年、この季節、たった一匹だけのここの住人(住蟲)です。
二匹でも三匹でもなく、一匹というのが、なかなかです。


2018年12月25日火曜日

天国は高い

                      
           
Copyright ©2018RioYamada
尾形 亀之助(1900 - 1942)

曇天

遠くの停車場では
青いシルクハツトを被つた人達でいつぱいだ

晴れてはゐてもそのために
どこかしらごみごみしく
無口な人達ではあるがさはがしく
うす暗い停車場は
いつそう暗い

美くしい人達は
顔を見合せてゐるらしい

天国は高い

高い建物の上は夕陽をあびて
そこばかりが天国のつながりのように
金色に光つてゐる

街は夕暮だ

妻よ――
私は満員電車のなかに居る

無題詩

から壜の中は
曇天のやうな陽気でいつぱいだ

ま昼の原を掘る男のあくびだ

昔――
空びんの中に祭りがあつたのだ

無題詩

昨夜 私はなかなか眠れなかつた

そして
湿つた蚊帳の中に雨の匂ひをかいでゐた
夜はラシヤのやうに厚く
私は自分の寝てゐるのを見てゐた

それからよほど夜るおそくなつてから
夢で さびしい男に追はれてゐた

たひらな壁

たひらな壁のかげに
路があるらしい――
そして
その路は
すましこんだねずみか
さもなければ極く小さい人達が
電車に乗つたり子供をつれたりして通る西洋風の繁華な街だ

たひらな壁のかげは
山の上から見える遠くの方の街だ



2018年12月20日木曜日

Low Down Blues

                                                        マディー・ウォータース(1913-1983                 
土曜日の晩は大事な晩だ
みんなで魚のフライを作って盛り上がった

おれは50セントとサンドイッチ一個もらって
一晩中演奏したさ。ありがたかった

みんなは、ああいう、心の深いところから来るブルースが
ほんとうに好きだったんだ
あんたたちも、ああいう本物の
純粋のブルースを聴いてみればいい
おれたちが一文無しだったころ持っていた
あのブルースのことだ
 
おれがあの頃感じていたのと同じブルースを
今感じろって言われても
それは無理っていうもんだ
今、シカゴでブルースをやってるときは
おれは「今のやつ」をやってるんで
それは、おれが生まれた時もうおれの中にあった
あのブルースとは違うもんだ
あのミシシッピーのサウンド
古いレコードに残っている
ミシシッピー河口の、三角州のサウンドだ
きっとあんたにも聞こえるはずだ

あの、本物の、純粋のブルースを聴いてみろよ
おれたちがほんとうに一文無しだったころ
おれたちが持っていた
あのブルースのことだ
クリスマスの朝、目が覚めて
家には、なにも食べるものがなかった
りんご一個、オレンジ一個、ケーキもなにも
食べるものは、なにひとつ
なーんにもなかったんだ
                                                    訳;山田リオ Copyright ©2014RioYamada 
(これは歌詞を訳したのではなくて、マディーのさまざまなインタビューの断片をまとめて一つながりにしたもので、歌を探してもむだです) 

2018年12月15日土曜日

ほほえみ


あめつちにわれひとりいてたつごとき
このさびしさをきみはほほゑむ
          (救世観音をみて)

       会津八一(1881 - 1956)

2018年12月14日金曜日

冬籠 万太郎


菊枯れて枯れてあとかたなかりけり
秋しぐれいつもの親子すゞめかな
歌舞伎座のうしろに住みぬ冬の空
かぞへ日となりし日ざしや青木の実
しみじみと日のさしぬける冬菜かな
柴垣を透く日も冬に入りにけり
いまは亡き人とふたりや冬籠
なにがうそでなにがほんとの寒さかな
すべては去りぬとしぐるゝ芝生みて眠る

           久保田万太郎 (1889-1963)

2018年12月11日火曜日

やわらかな


わたしの腕の血管に ゆっくりと
注射針を入れながら 話しかける
先生の声は いつも
どるちぇ ぴあの 

           山田リオ

2018年12月7日金曜日

推敲

推敲、水耕、遂行。
どこかで止めないと、永久に完成しない

いや、まてよ
完成しないのか、させないのか、できないのか

ここでやめる、という勇気も必要だな

まあ、このへんで、勘弁してやろう

2018年12月5日水曜日

雨 尾形亀之助⑦

雨日

午後になると毎日のやうに雨が降る
今日の昼もずいぶんながかつた
なんといふこともなく泣きたくさへなつてゐた

雨の祭日

雨が降ると
街はセメントの匂ひが漂ふ

雨が降る

夜の雨は音をたてゝ降つてゐる
外は暗いだらう
窓を開けても雨は止むまい
部屋の中は内から窓を閉ざしてゐる


                    尾形亀之助(1900-1942)

2018年12月4日火曜日

同義語


体調が良ければ良いなりに
良くなければ、それなりに
仕事に夢中になっています
おもしろくて、しょうがないです
(わたしの場合、仕事と遊びは同義語)

                         やまだ