2018年9月30日日曜日

空気

リュート

もちろん 夜
ひっくり返された リュートの
一本の弦 わたしは わたしの道を行く
それは 耳慣れない音がする

こちらに 埃 むこうにも 埃が 

わたしは その両方を 聴く 
でも そのまま 進む 
わたしは 思い出す 木の葉たちが 審判を
そして 冬を待っていたのを

わたしは 思い出す 雨と その いくつもの道を
雨は その 全ての道を 辿る
どこにもない 道を

    W.S.マーウィン(1927-) 訳:山田リオ


2018年9月29日土曜日

正平さんのこと

               山田リオ


二つの、性質が違う美術展に行った。
時間がたってから、すこしづつ、
自分の受けた感じが変質してくる。。

ボディー・ブロウのように、後から効いてきているというか、
あるいは、深い部分の内出血のように、か。
身体の中が、少しづつ活性化してくるような気がする。
そして、気がつけば、言葉で考えることをやめていた。
ただそこにいるだけの、静かな自分になってくる。

昨晩から、しきりに松田正平さんのことを思っている。
展覧会に行った直後は、いろいろと頭で考えるだけだったのが、
今は、虫のように、言葉にならないところで、
ぼーっとしている。

そうしていると、時間がたつにつれて、
心が自由になってくる。




つまづきて振り返る道に何もなし
わが来しあとをうす日さしをり

         北小路 功光(1901-1989)

2018年9月28日金曜日

明恵


 
昔みし道はしげりて跡たえぬ月の光をふみてこそ入れ

山寺に秋のあかつき寝ざめして虫とともにぞなきあかしつる

                                          明恵(1173-1232)

2018年9月26日水曜日

©RioYamada

at 2004 04/18 06:40 編集

                         山田リオ

渚に佇んで
遠くをみている
波は
つぎからつぎに
水平線のほうからやってきて
盛り上がり泡立ち崩れ落ち砕ける
でも
あの波は
わたしが待っている
波ではない
どの波が
それなのか
ずっと
待っているその波は
どの波なのかは
よくわからない
でも
それは
あの波でもなく
その次の波でもなくて
それは
こうやって渚に死ぬまで佇んでいても
永久にやってこない波なのかも知れない
しかし
ある日
水平線のほうから
それは
奇跡のように
輝きながらやってきて
盛り上がり反射し散乱し透き通り
泡立ち崩れ落ち砕けるだろう
そしてその波が
まさに
わたしが待っているはずの
あの波であったとしても
それで
どうなるというのか
わからない
でも
生きているかぎり
渚に佇み
はるか遠い水平線のほうを見て
押し寄せてくる波を見て
あの波が
まっていたなつかしいあの波が
渚めがけて
押し寄せ輝き
そして崩れ落ちる日を
ただ
今日も
じっと
佇んで
待っていよう
 

Copyright ©2004RioYamada

2018年9月14日金曜日

別荘生活


しばらくの間、よんどころ無い理由で、別荘におりました。
やっと今日、出所の運びとなり、おつとめ、ごくろうさん。

別荘生活で辛いのは、まず、生活空間の狭さ。
四人部屋でしたので、生活音や、声、
その他、人間起因の音が四六時中24時間、
途切れることがありません。なので、不眠になります。
さらにマイるのは、食事です。
それは味が原因で、毎食、ひたすら食欲が出ません。
極端に薄味だし。「美味しく食べさせよう」なんて配慮は、
ございませんので。
エスプレッソのコーヒーがほしい、とか、贅沢は通用しない世界です。

お注射とか、切った貼った、出血なんかは、通過儀礼ですので、まあ、我慢できました。
看守のみなさんも、にこやかで、やさしくて、よろしいんですがね。

とにもかくにも、めでたく自由の身に戻れましたです。
今夜は、なにか、美味しい物をいただきたいと思います。

PS 別荘で必要不可欠なものは、なんと、スマホ。おかげで、助かった!
                         や

2018年9月9日日曜日

辞世


あの世からスマホで打つわ極楽なう
                say少納言

あなたらの気持ちがこんなにわかるのに言ひ残すことの何ぞ少なき
                           河野裕子
 

後の世も又後の世もめぐり会へ染む紫の雲の上まで
                                         源義経

この世をばどりゃおいとまに線香の煙とともに灰左様なら
                         十返舎一九
人魂(ひとだま)で行く気散じや夏野原
                  葛飾北斎

葬式無用 戒名不用
         白洲次郎
     

2018年9月7日金曜日

オリーヴの空
























2012年2月7日火曜日  山田リオ


雲を見れば、夏のよう。
日差しも強くなってきた。
オリーヴの木は、ますます元気。

子供のころ、くりかえし読んだ、ルイジ・カプアーナ作「シチリアの少年」(岩波少年文庫)のなかに、オリーヴの枝で羊の肉を焼く場面があった。おいしそうだったので、今でも憶えている。

日曜は、ロシアのボリショイ劇場から中継が、映画館の大画面で見られるので、行った。
これは、ヨーロッパやロシアの劇場からバレーやオペラの公演を中継し、それを大画面で見ることができる。
日本でもやっているのかな?

今回はボリショイ・バレーの「コッペリア」だった。
もう、このバレー団がなくなれば失われてしまう、19世紀のロシアの演出を、現代の、ロシアのダンサーたちが踊った。見られて、ほんとうに幸運だった。

コッペリアはロボットが出てくるバレーだ。
そう言えば、オペラの「ホフマン物語」も、ロボットが登場する。
19世紀のフランスでは、女性型のロボットが人気だったのだな。
どちらも、出てくるロボットは、今の「アシモ」より美しい。
でも、最近よくテレビで見る、大阪大学の石黒教授の女性型アンドロイドもいいね。Copyright © 2012Rio Yamada



2018年9月2日日曜日

一休


世の中は起きて糞して寝て食って後は死ぬるを待つばかりなり

女をば法の御蔵と言ふぞ実に釈迦も達磨もひょいひょいと生む

                                     一休宗純(1394-1481)