2015年4月25日土曜日
靴下
山田リオ
靴下は、ひとつでは一足にはならない
両足分、二つそろって、一足になる
かたっぽだけの靴下は
クリスマスイヴにサンタさんから
プレゼントをもらうとき、役に立つけれど
私の場合、サンタさんには忘れられてしまったし
足は二つあるから、靴下でもソックスでも
やっぱり二つないと、穿いたことにはならない
靴下には右用と左用があって
左用は、いつでも左足に穿く
なぜかというと、どの靴下も
左のほうがゆるくできているので
わたしの左足にはゆるい靴下を
右足のほうにはすこしだけきつい靴下を
はくのがきまりになっていて
右用のを左足に穿くと、きつくてたまらないし
左用のを右足に穿くと、ゆるくて気持ちが悪い
だから穿く前に、注意して右か左かを判断する
一度で左足用を左に穿けたら成功で
右足のほうは、のこった一つを穿くだけでいい
でも、たいていのばあい
右用の靴下を左足に穿いてしまって
あわてて脱いで、もう一つのほうを
左足に穿いてみて、やっと安心する
そんなふうに、同じように見える靴下も
一足だというので二ついっしょに買ったのに
ふたつの靴下は、けっして同じではない
人間も靴下とおなじで
ふたりおんなじ人間というのは存在しない
かりに、二人が一卵性双生児だったとしても
二人はやっぱり、どこかちがっているわけで
人も、靴下とおなじように、同じものは二つない
では、こんどいつか、靴下ではなく
足袋や、下駄や、靴の話もしようね。
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花筏
春風の花を散らすと見る夢は覚めても胸のさわぐなりけり
花見ればそのいはれとはなけれども心のうちぞ苦しかりける
風さそふ花のゆくへは知らねども惜しむ心は身にとまりけり
世の中を思えばなべて散る花のわが身をさてもいづちかもせむ 西行法師
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