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曇天
遠くの停車場では
青いシルクハツトを被つた人達でいつぱいだ
晴れてはゐてもそのために
どこかしらごみごみしく
無口な人達ではあるがさはがしく
うす暗い停車場は
いつそう暗い
美くしい人達は
顔を見合せてゐるらしい
天国は高い
高い建物の上は夕陽をあびて
そこばかりが天国のつながりのように
金色に光つてゐる
街は夕暮だ
妻よ――
私は満員電車のなかに居る
無題詩
から壜の中は
曇天のやうな陽気でいつぱいだ
ま昼の原を掘る男のあくびだ
昔――
空びんの中に祭りがあつたのだ
無題詩
昨夜 私はなかなか眠れなかつた
そして
湿つた蚊帳の中に雨の匂ひをかいでゐた
夜はラシヤのやうに厚く
私は自分の寝てゐるのを見てゐた
それからよほど夜るおそくなつてから
夢で さびしい男に追はれてゐた
たひらな壁
たひらな壁のかげに
路があるらしい――
そして
その路は
すましこんだねずみか
さもなければ極く小さい人達が
電車に乗つたり子供をつれたりして通る西洋風の繁華な街だ
たひらな壁のかげは
山の上から見える遠くの方の街だ
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