08/17/2014 山田リオCopyright ©2014RioYamada
昼日中、陽射しを避け、高架下の薄暗がり
闇市の匂いの残る店々を覗きながら
ゆるゆると、好きな蕎麦屋のほうへと歩いて行く
この、至福の時。
まだ早いかな、と思ったので
そうだ、ちょいっと昼飯前の前菜を
と、角を右に曲がったら
もうそこが、肉の大山さんの店だ
この店は午前11時に開店だから
もうすでに、路上で呑んでる人がいる
大枚120円也を握りしめて、列に並ぶ
順番が来たら、「やみつきメンチひとつね」「あいよ」
という手続きを経て、小銭と熱々のメンチを交換する
メンチを手に持って店を出、路上の日陰で、食う
揚げたての熱いメンチ。肉屋のメンチだから、ラードで揚げてある
この香り。この味。これぞ至福の時。
食べ終わり、口を拭い、文字通り何食わぬ顔で
十歩ほど歩けば、もう、その角っこが上野の藪だ
冷房の効いた店内に入り、席に通され
いつも通り、せいろの大盛りを注文する
冷たい蕎麦茶の香りも、いつも通り
今しがた、そこでメンチ食って来たことは、誰一人知らない
やがてせいろが運ばれ、葱も、おろし本わさびも、蕎麦つゆも
そして香り立つ蕎麦も、いつも通り
ほんとうに美味しい蕎麦なんてものは
このせつ、そうそうあるもんじゃござんせんよ
でも、なんですな。こうやって、上野で、旨い蕎麦を手繰っている
こういうのを、まあ、至福の時、って言うんでしょうな。
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