+++++++++++++++++++++++++++++++ 山田リオ
繰り返し読む文庫本の背がゆるんできて
放っておくとページがなくなったりするのが嫌なので
放っておくとページがなくなったりするのが嫌なので
テープであちこち補強してみたが、この本の余命は短い
ぼくが去れば、この本を読む人は、もういない
ぼくが去れば、この本を読む人は、もういない
一日物言わず、か。
毎日、何も言わないでいると、日本語も英語も
話す言葉をどんどん忘れていくようで、怖ろしくなる
でも一人言は言わない、歌ったりも、しない
病院でたくさんの人に触られたり、話しかけられたり
切られたり縫われたり注射されたり検査されたり
そうやって死んでいくのはたしかに、孤独死ではないのだろうが
ひとはやっぱり逝くときには、誰でも、一人で逝くのだ
村人たちが、引っ越したり、立ち去って、いなくなってしまった
そんな廃墟のような山村で一人、野菜をつくったりして
ゆっくりとめぐる季節のなかで終わっていけたら
これほど贅沢な旅立ちはない。それは孤独死なんかではない
雨音が聞こえる、ここには降るはずもない、日本の静かな雨の音が聞こえる
昼も夜も、雨音を聞きながら、草木と同じように、雨に濡れて
不平不満を言わず、他人の噂話をせず、世間のニュースも知らぬまま
草木や生き物たちのように、何も言わず、立ち去っていくことができたら。
(All rights reserved 、Copyright © 2012Rio Yamada
このHPの全ての記事は著作権法によってコピー、転載を禁止されています。)
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