山田リオCopyright©2004RioYamada
at 2004 03/11 08:50
人はみんな 人に失望しながら生きていくんだろうか
ある人は 利用するだけの目的で 友達をつくる
ある人は その友達のささやかな成功を憎み ねたむ
ある人は より大きなグループに加わろうとして 友達を裏切り
ある人は 金銭的安定のためだけに 結婚し
ある人は おかまいなしに大きな声で あれこれをしゃべりちらす
そういう人が わたしを失望させるけれど
そういう人に失望するという わたしも
くりかえしくりかえし たくさんの人を失望させながら
自分で自分に失望しながら 生きていくんだろう
でもかりに けっしてわたしを失望させない
そういう人がいたらどうだろうか
きっとその人と 夜が更けるまで語りあって
疲れたら眠って 目が覚めたら また笑ってさっきの話の続きをしよう
わたしは わたしが好きなもののことを話そう
心屈した時に助け起こしてくれて
また立って 笑って歩いていけるように 勇気をくれる
そういう わたしのたいせつな物たちのことを話そう
そして その人はきっと
その人がいっしょに暮らしている 猫のことを話してくれるだろう
雨の日に窓の外を見ている猫の
うしろ姿の輪郭の線のことを
晴れた朝に開いた窓に座って
一日の初めの うすみどり色の空気の匂いを嗅いでいる
その猫の幸福な表情のことを
ドアのそばでその人を待っているときの 首をかしげた猫の耳や姿勢のこと
呼ばれて返事するときの その猫の声や
柔らかな毛の下の ごつごつした骨のことも
その人のベッドで さっきまで寝ていたけれど
もうむこうに行ってしまった猫が シーツに残したあたたかい手触りのことを
猫のざらざらした薄い舌や ビロードのような掌のことを
硬くとがった柔軟な髭のことを
そしてその猫の 北欧の深い湖のような目の色のことを
くりかえし 話してくれるだろう
もしも そういう人が ほんとうにいたとしたら
わたしは けっして失望することはないだろう
たとえその人にとって わたしがあの猫の何十分の一の価値もなかったとしても
それでも わたしはいつでも微笑んで 心屈することもなく
満ち足りて 生きていけるんだろう
Copyright ©2004Rio Yamada

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