山田リオ
電車に乗っていて
偶然、となりに座ったひとが眠りにおちる
そういうことが、最近、三回あった
眠りにおちた三人のひとたちは
みんな、そのとき、ぼくの肩を利用したのだ
そして、偶然だろうか
三人とも、女性だった
最初は、二十歳くらいのひとで
ぼくがとなりに座ると、すぐに体重を預けてきた
寝息をたて、深く眠っているようで
非常に気持ちよさそうなのだが
頭が乗っているので、肩が重い
ある駅に電車が着くと、すっと立ち上がって
何事もなかったように、降りて行った
二人目は、かなり年配の女性だった
何回か、こちらに傾き、また戻る
それを繰り返してから、頭が降りてきた
控えめに、ゆっくりと体重がかかってくる
でも、三つ目の駅で、咳をし始めた
手で口をおさえて、まっすぐに座りなおしてから
そのまま、正しい姿勢で降りていった
三人目の女性は、ほどよい年齢
座ると、眠いらしく、肩が触れてくる
我慢していても、けっきょく、眠気には勝てず
すこし、うつむくように、顔を伏せて
肩に、頭の重さを預けてくる
目的の駅に着くと、なんのためらいもなく
ごく自然に立ち上がって、降りていった
わたしは、といえば
三回とも
眠りに落ちることは、なかった
今までの永い人生の中で
男性の睡眠のために
肩を利用されたことは
まだ、一度もない。 Copyright ©2014RioYamada
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