2019年7月26日金曜日


              山田リオ
夜更け
窓の外にある巨きな樹のおかげで
風が吹いているのがわかる
ああ 風が吹いているんだと
思う

ゆっくりと時間をかけて
少しずつ
たらたら ぽたぽた
丁寧に ていねいに あの人は
デミタスに珈琲を 淹れてくれた
願うように 祈るように

あんなふうに しみじみと
珈琲を淹れていた あの人
暗い部屋のベッドの中で
風の音を聴いていると
自分が風の音になってしまうのは
やっぱり そこに 樹がいてくれるからなのだ



2019年7月16日火曜日

Rio Yamada 2019

雨は音楽だ
でも
作曲家は
だれなのか
どこにいるのか
知らない

     やまだりお

2019年7月12日金曜日

ともだち


真の友人を持つことは、片手間仕事では出来ない。
もし、何人も友人がいるというのなら、
彼らはあなたの本当の友人ではないのだ。

               トゥルーマン・カポーテ(1924〜1984)

2019年7月10日水曜日

いのち


この世界は美しいものだし、人間の命は甘美なものだ」

               ゴータマ・ブッダ(紀元前五世紀)
                訳:中村元(1912-1999)
rio yamada photo


蜘蛛の糸のような細い雨が降っている朝です

2019年6月25日火曜日

夜明け


眠れないから しかたなく そのまま 
横になって まだ暗いのに
外で小鳥が なにか言ってる
                やまだりお

2019年6月22日土曜日

考える人

 
わたしの父がよく言っていた。

『三流の頭脳は、多数派といっしょに考える。

二流の頭脳は、少数派といっしょに考える。

そして、一流の頭脳は、自分一人で考える。

明確でない時、いくつも意見があるとき、

わたしは必ず、自分自身の頭脳で考え、決定する。』

       クリストファー・ロビン・ミルン(英国)は、
       「くまのプーさん」の作者、A.A.ミルンの息子。

2019年6月10日月曜日

だって



死にたくない
できれば 死にたくない
なんとか おねがいできませんかね
だって
死んだら Paulinho da Viola 聴けなくなるからね

                やまだ

2019年6月9日日曜日

雨の日

2019年5月17日金曜日 

Here's that rainy day again
ジョニー・バーク(1908-1964) 訳:山田リオ

あの夢の残りを とっておけばよかった
ふしぎと 今日もまた 雨の日だ
だれかが 言っていた 雨の日だ 
こうなるような気がしてた と 思ってから 
一人で 笑ってしまった

捨ててしまった 擦り切れた願いは どこにある
それは 愛を すぐそばまで 連れて来てくれたのに
ふしぎと 恋はいつも 冷たい雨の日に変わってしまう 
ふしぎと 今日もまた 雨の日だ

2019年6月7日金曜日

ジャカランダ

Jacarandaa

お店で、ジャカランダの鉢植えを見つけた。
我慢できずに、買ってしまった。
今の季節だと、きれいな紫色の花が咲く。
鉢を、窓のそばに置いてみようと思う。

でも、花が咲いて、育って、大木になるんだ。
でもそれは、そのときに、心配するさ。
Jacaranda、ジャカランダ、ハカランダー。

2019年6月6日木曜日

宮柊二


風かよふ棚一隅に房花の藤揉み合へばむらさきの闇  

頭を垂れて孤独に部屋にひとりゐるあの年寄りは宮柊二なり
                  
                                    宮柊二(1912-1986)

2019年5月31日金曜日


風吹く家のまはり花無し

       尾崎放哉(1885-1926)
  (おざきほうさい、無季自由律俳句)
 

2019年5月27日月曜日

遠い渚



ここから波音きこえぬほどの海の青さの
                        
                   尾崎放哉(1885-1926)
                        (おざきほうさい、無季自由律俳句) 
 
いつも、要町にある、もりかずさんの海の絵を思い出す。
あれも、ずっと遠いところで波が砕けているのが見える。 
でも、聞こえない Copyright ©2015RioYamada

2019年5月22日水曜日





「始まりも、終わりもない。
人生への限りない情熱があるだけだ。」
                

  フェデリコ・フェリーニ (1920–1993)

2019年5月17日金曜日

雨の日

Here’s that rainy day
          ジョニー・バーク(1908-1964) 訳:山田リオ

あの夢の残りを とっておけばよかった
ふしぎと 今日もまた 雨の日だ
だれかが 話していた 雨の日だ 
思った通りだ と 考えてから 
笑ってしまった

もう捨ててしまった 擦り切れた願いは どこにある
それは愛を すぐそばまで 連れて来てくれたのに
ふしぎと いつも愛は 冷たい雨の日に変わってしまう 
ふしぎと 今日もまた 雨の日だ

 https://www.youtube.com/watch?v=_R6E_2GZ3Pg

2019年5月15日水曜日

救い

三百年も昔の 鍵盤楽器の音楽を
現代の楽器で ピアノで弾く
ドラムセットもアンプリファイアもない
ゆったりとした 静かなポリフォニー
丸い 濡れた おだやかな音に
わたしは日々 救われる 
Copyright©2019RioYamada     山田リオ 

 

2019年5月11日土曜日

たんぽぽ

                     山田リオ

Dandelion 蒲公英  タンポポ Taraxacum
だれが どんな名前で呼ぼうと
季節が巡って 時が来れば
けっして忘れたりしないで
そこらじゅうから いっせいに
出てくるきみたち
律儀に 確実に 間違いなく
黄色くて 緑色のきみたちは
土の中から出てくるんだねえ


花 という言葉が生まれたのは
つい最近のことで
春 という言葉を考え付いたのも
ほんの昨日のことだけど
それよりも ずっとずっと昔から
きみたちは
そこにいたんだね
 
自転車はすぐに錆びる
崩れて 粉になって 溶けて
消えてなくなる
そしてぼくも 自転車と同じように
やっぱり すぐにこわれて
錆びて 崩れて 溶けて
いなくなるんだろう

でも きみたち
黄色くて 緑色のきみたちは
なにがあろうと
自転車や人間が どうなろうと
まるっきり平気で
季節がめぐって 時がくれば
けっして 忘れたりしないで
そこらじゅうから いっせいに
出てくるんだろうねえ
律儀に 確実に 間違いなく
土の中から出てくるんだろうねえ
Copyright©2014RioYamada

2019年5月10日金曜日

バス停の罌粟

rio yamada photo 

バスを待っている
足元に ポピー 
小さい 罌粟 けしの花
 Copyright©2019RioYamada 

2019年5月8日水曜日

風船画伯



風船画伯 谷中安規のことを
思いだしていました

柏餅


柏の葉で巻いてあるので 柏の香り
でも 餅に 蓬の葉を練り込んであるので
よもぎの香りも する
その中にある餡は 小豆の粒あん

2019年5月3日金曜日

日一日とはなんであるのか

©RioYamada 

どんなにうまく一日を暮し終へても
夜明けまで起きてゐても
パンと牛乳の朝飯で又一日やり通してゐる

彗星が出るといふので原まで出て行つてゐたら
「皆んなが空を見てゐるが何も落ちて来ない」と暗闇の中で言つてゐる男がゐた
その男と私と二人しか原にはゐなかつた
その男が帰つた後すぐ私も家へ入つた

       尾形 亀之助(1900 - 1942)

2019年4月25日木曜日

よくすべる靴

rioyamada2019
雨の降る中 外出して
駅に向かう 濡れたコンクリートの
階段を 急いで降りているとき
足がすべった
両足が揃って前に上がり
身体が水平になって
そのまま 階段に落ちた

なぜ頭を打たなかったのか
わからない
右肩甲骨打撲
右腰も痛みが残ったが
次の日は 首も痛い 動かせない

そこで
その時履いていた靴を描くことにした
よく滑る靴だ
しかし 靴に罪はない
悪いのは私だ
時間がかかったが だいぶ回復した
あの程度の怪我で済んだのが 
ありがたい 
ほんとうに 運が良い男だ
感謝です             Copyright©2019RioYamada 

尾形亀之助 ⑤

 
雨の祭日

雨が降ると
街はセメントの匂ひが漂ふ

雨が降る

夜の雨は音をたてゝ降つてゐる
外は暗いだらう
窓を開けても雨は止むまい
部屋の中は内から窓を閉ざしてゐる


うす曇る日

私は今日は
私のそばを通る人にはそつと気もちだけのおじぎをします
丁度その人が通りすぎるとき
その人の踵のところを見るやうに

静かに
本のページを握つたままかるく眼をつぶつて
首をたれます

うす曇る日は
私は早く窓をしめてしまひます

無題詩


ある詩の話では
毛を一本手のひらに落してみたといふのです
そして
手のひらの感想をたたいてみたら
手のひらは知らないふりをしてゐたと云ふのですと

無題詩

から壜の中は
曇天のやうな陽気でいつぱいだ

ま昼の原を掘る男のあくびだ

昔――
空びんの中に祭りがあつたのだ



三十になれば――
そんなことを思ひつづけて暮らしてしまつた
一日

ずつと年下の弟にわけもなくうらぎられて
あとは 口ひとつきかずに白靴を赤く染めかへるのに半日もかかつて
何を考へるではなしいつしんに靴をみがいてゐたんだ

そして夜は雨降りだ


                                   尾形亀之助 (1900 - 1942)

2019年4月24日水曜日

Carafe カラフ

Carafe カラフ
(略)

男は横になったまま、客席の方向を見つめている。

カラフが舞台上空から降ろされ、男の身体の近くで止まる。

彼は動かない。

上空から、口笛が聞こえる。

彼は動かない。

カラフは、更に降りてくる。ぶらさがったまま、顔のまわりを動く。

彼は動かない。

カラフが引き上げられ、舞台上空に消える。

木が舞台背景に再び現れる。ヤシの葉が開き、影も再び現れる。

上空から口笛が聞こえる。

男は動かない。

木が引き上げられ、舞台上空に消える。

彼は自分の掌を見る。
              - 幕 -

  「言葉のない劇 一人のためのマイム」 より
 サミュエル・ベケット(1906 - 1989) 訳:山田リオ   

2019年4月16日火曜日

コレクション

                 山田リオ

見上げると 空には 雲があった
ふたたび見上げると 雲はもう そこにはなかった

あの日の朝 あの街で見上げた あの雲は
今は 空のどこにも ないけれど
あの雲は 今もたしかに ここにある

別の日に あの国の あの町で 見上げた あの雲
あの夕方の駐車場の ユーカリの木の上 
空の高いところ あそこにあった あの雲だって 

そうやって集めた いくつもの雲たち
わたしが なにもかも置いて 旅立つ日に
わたしが集めた あのたくさんの雲たちを
わたしは ぜんぶ ちゃんと つれて行こうと思う  
Copyright©2019RioYamada  

2019年4月15日月曜日

運命論


路上で、偶然に出会った猫。
もうたぶん、二度と会わないだろう猫。
いや、ほんとうに偶然だったのか、
それとも、猫とわたしは、出会う運命だったのか。

映画「アラビアのローレンス」の中で、
砂漠で迷ったあげくに生還した Gasim(ガスィム)が言った言葉は、
「では、すべては、すでに、書かれてあったんだ」。
ガスィムは、運命を信じていた。
だが、その後、彼にどんな運命が待っているかを、
ガスィムは知らなかった。

この猫には、どんな将来が待っているのか。
人生は、無数の偶然の寄せ集めなのか。
それとも、何もかも、すでに、書かれてあるのか?
Copyright©2019RioYamada          山田リオ

2019年4月10日水曜日

曇りの五月

Rio Yamada photo
           山田リオ
五月はいつも 静かだった
来る日も来る日も 曇りの五月 
ジャカランダの紫色と 空の色 
樹の下の薄闇 やわらかな光
それはたしかに 憶えている

あの町が 遠い遠い場所になった 今
時間が 記憶を 消したらしく

自分があのころ 何を思っていたのか
いくら考えても 思い出せない しかし 

曇りの五月の あの色だけは 
今でも まったく 変わらずに
私のなかの ここにある 
 Copyright©2017RioYamada                                

2019年4月9日火曜日

湯吞み


ぼくといっしょに
地球上をあちこち
うろうろ移動して
永い永い年月月日
暮らした湯吞みだ
朝の緑茶も吞むし
芋焼酎お湯割りも
これじゃないとね
備前焼の湯吞みは
だいじな古い友達

         山田リオ


2019年4月8日月曜日

青空


耳を病んで音のない青空続く

 住宅顕信(すみたくけんしん)(1961-1987)