クモ ヒト メダカ コガネムシ
コノ ウツクシイ ホシニスム
ミンナ ダレモガ オダヤカニ
山田リオ
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■2005/10/28 (金) 山田リオ
気がついたら いつのまにか わたしは
母よりも 年上になっていた
これから もし わたしが生きていれば
毎年 一歳ずつ 母より年上になっていくわけで
それは 不思議なことのようにも思える
親戚の一部から 無視されていた母は
姓は苗字、名は名前、英語だと、Last name and first name.
ああ、そうだ。surname, given name という言い方もある。
surname が苗字で、given name が・・
でも、「下の名前」という言い方には、なんだろう、違和感がある。
ぼくの名前の「リオ」は、ポルトガル語、またはスペイン語で「河」という意味だ。
そして、河は、海に向かって流れて行く。そう。いつか、海に出会う。
だから何だって? だから、ね、そういうことなのさ。
ところで、一生の間には、一度くらい、
この写真のような日没に出会う幸運も、あるんだよね。 Rio
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■2010/05/20 (木) |
セミの声が聞こえない夏 いつまでも終わらない夏
スイカを買おうと スーパーマーケットに行った
プラスチックの箱に入れた 細かく刻んだスイカの破片が
ほんの少し あるだけだった
それで 八百屋さんに行ったら
三日月の形のスイカがあったので すぐ 買った
八百屋さんが 「もうすぐ スイカは 終わりなんですよ」 と言う
そうか 今年の夏は 終わらないんだと思っていたら
スイカさんの世界では 夏は もうすぐ 終わるんだな
それなら 気がつかなかったけど 季節は まだ あるんだ
「そうだよ 夏は もう 終わるんだよ」 スイカさんが そう言っています
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On the Road |
詩集「ときのおわり」に、嬉しい感想を頂きましたので、掲載します。どうもありがとうございます。
「(略)無国籍のような、無所属(性を超えて、
山田リオ
早朝 地下鉄に乗った
席に着く 下を見ると 床に みどり色のコガネムシがいる
虫は少し動いて 止まる 方向転換して また 止まる
どんどん人が乗って来る 踏まれそうだ
急いで コガネムシを拾って ティッシュで包んだ
虫は じっとしているようだ
目的の駅に着いて 電車を降りて 外に出る
近くの公園まで歩いて テイッシュの包みを開く
コガネムシは元気だ ツワブキの葉の上に 虫を置く
何度か方向転換してから コガネムシは 動かなくなった
コガネムシが 安心したようなので ぼくは 公園を後にした
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■2003/09/25 (木) 宴のあと
■2007/08/07 (火) ユタの食事
ポプラの木の下を 川が流れている
水がたっぷり盛り上がり ところどころ渦を巻いて
川岸の草むらに 溢れ出そうになりながら
流れている 幅五メートルほどの川の
とろりとした 暗色の 冷たい水の深みに
カワマスは きっと いる
わたしは ポプラの木陰にかくれて
カワマスに 見られないように注意しながら
ハリに ミミズをつけ
赤い トウガラシのかたちの 浮きもつけて
そっと 水の中に送り込む
しばらく待っていると あっという間に
糸も浮きも釣竿も みんないっぺんに
川の深いところまで 引き込まれる
やがて 銀色のなかに 虹を秘めたマスが
あきらめたように 青草の上に横たわって
わたしはナイフで まだ生きている魚の腹を裂き
内臓を捨て そのかわり 香草とレモンをつめこみ
持ってきた岩塩を ふりかけ そして
ポプラの枯れ枝で 焚き火をつくる
フライパンに入れたバターが 熱くなるまでの間
さっき 川の流れで冷やしておいた
あの ワインを呑もうと思う
焦げはじめた バターの香り
レモンと 香草の匂い
マスの 皮と肉が焼ける匂い
川の匂い 青草の匂い ポプラの匂い
焚き火の匂い ポプラを吹く 高原の 風の匂い
何もかも すべてをひっくるめた
これが 今日の わたしの食事だ Copyright ©2007RioYamada
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03/21/2006 山田リオ
一週間 昼も夜も 激しい雨が降り続いてから
クリスマスの朝になって 雨が止んだ
雨の中でも ヤマバトは庭に来て 餌を待っている
朝 ガラス窓を叩くのも ヤマバトだ 餌の催促だ
雨の一週間 ハチドリは 一度も姿を見せなかった
赤いルビー色のも 緑の玉虫色のも 現れない
雨音で あの「ブーン」が聞こえなかったわけではなくて
給餌器の砂糖水が 少しも減らないのだ
毎朝 気をつけているのに 呑んだ形跡がない
小指ほどのハチドリでも 運動量が多い
カロリーが必要で 絶えず蜜を飲まないと
生きていられない そう思う
雨が止んで 晴れた朝 ドアを開けた
ジャカランダの木の方から あのハチドリが
ブーンという羽音を立てて 勢いよく飛んで来た
雨の間 どうやって生き延びたのか わからない
もしかして ハチドリは こんな長雨の時
短い冬眠をするのかもしれない と思う
仮死状態になって 命を繋いでいるのか
今朝もまた ルビー色の きらきら光る あのハチドリが
ぼくの目の前 30cmの位置で 空中停止している
ブーン 翼が すごいスピードで羽ばたいていて 見えない
じっとこっちを見ているのは ルビーくん ほんとうは
ぼくがかぶっている 赤い野球帽が 気に入っているのだ Copyright ©2006RioYamada