2023年10月6日金曜日

  ■2005/10/28 (金)         山田リオ 

気がついたら いつのまにか わたしは

母よりも 年上になっていた

これから もし わたしが生きていれば

毎年 一歳ずつ 母より年上になっていくわけで

それは 不思議なことのようにも思える

親戚の一部から 無視されていた母は


口数が少なくて 他の人とは どこか違っていた

でも わたしにとって 彼女はいつも 

ただひとりの母だったし 今も それに変わりはない

むしろ 自分は 男でありながら

だんだん 母に似た人間になっていく気がする

わたしは 父をおぼえていないので

母とわたしは この世で唯一の親であり 子であり

歳を重ねることで 母に似ていくのは 当然のことかもしれない

母は 物の手触りを愛する人だった 何かに目をとめると

とことこ歩いて 道を横切り 手を触れずにいられなかった

それは 角の教会の 壁の石積みだったり

古びて朽ちかけた 板塀だったりするのだが

彼女は立ち止まり 目でいつくしんでから そっと手を触れた

母に「勉強しろ」 と言われたことは 一度もなかった

将来や就職について 訊かれたことも 一度もなかった

でも 彼女は ぼくが 何か 好きなことに夢中になっているのを

石や板塀を見るのと同じ あの まなざしで

曲がり角から覗き見るように 見ていた

お母さん わたしは だんだん あなたに似てきました

そして あなたが何を思い なにを感じて 生きていたのか

すこしだけ わかってきたような 気がするのです

いつか あなたと 再会できる日が来たら

あなたに そっくりな人間に生んでくれて ありがとう

そう 言いたいです         Copyright©2005RioYamada
rio yamada photo


1 件のコメント:

  1. 匿名さん、ありがとう。お母さんと再会できますように。

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