2014年2月17日月曜日

桜の園


 ■2007/02/27 (火) 桜の園

Anton Pavlovich Chekhov (Анто́н Па́влович Че́хов) アントン・パヴロヴィッチ・チェーホフ(ロシア、1860~1904)山田リオ訳

(第四幕、劇の終末、フィルスの独白)

フィルス:
(ドアに歩み寄り、取っ手にさわる)

錠がおりている。みんな、行ってしまったんだな。
(ソファに腰をおろす)
わしのことを忘れて行ったな。
なあに、いいさ、ここに、こうして座っていよう・・・
だが、旦那さまは、外套も召さずに行かれたのか。
(ため息)
わしは、なんで気がつかなかったんだ・・・
あんなに濡れておいでだったというのに・・まったく・・・・・
(何かつぶやくが、聞きとれない)
一生が過ぎてしまった。まるで、生きたおぼえがないくらいだ・・・
(横になる)
すこし、横になろう・・
あああ、なんというざまだ。なさけない・・もう、ぬけがらだ・・・
この、できそこないが。
(横たわったまま、動かない)

(遠くから、まるで空から響いてくるように、音が聞こえる。それは紐が切れるような音だ。そして、やがて音は止む。すべてが静かになる。
そして、斧が木を切る音が、ときおり聞こえてくる)



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