2014年2月7日金曜日

「作品第1004番」 再録



  

                宮澤賢治(1896-1933) 

今日は一日あかるくにぎやかな雪降りです
ひるすぎてから
わたくしのうちのまはりを
巨きな重いあしおとが
幾度となく行きすぎました
わたくしはそのたびごとに
もう一年も返事を書かない
あなたがたづねて来たのだと
じぶんでじぶんに教へたのです
そしてまったく
それはあなたのまたわれわれの足音でした
なぜならそれは
いっぱい積んだ梢の雪が
地面の雪に落ちるのでしたから


■2002/05/03 (
) 作品第1054番            
                  
             宮澤賢治

何と言われても
わたくしはひかる水玉
つめたい雫
すきとほった雨つぶを
枝いっぱいにみてた
若い山ぐみの木なのである

                      (雫=しずく)


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