2019年2月28日木曜日

節句


紙雛や箪笥の上のまどあかり
         
             永井荷風(1879-1959)

2019年2月25日月曜日

昼顔


亡き人がかたはらに立つ夏の径
ひるがほの花がすぐそばに来る

                 小島ゆかり

2019年2月22日金曜日

草の春

rio yamada

土と石ころばかりの地面
路地の影の狭いところに
おおばこがいくつも
芽を出した

2019年2月21日木曜日

無言


rio yamada
今日一日だけ
なにも言わないで
だまって
ただ にこにこしていよう
そうおもった
でも
できなかった

          やまだりお

2019年2月20日水曜日

良寛


うたもよまむ てまりもつかむ のにもでむ
こころひとつを さだめかねつも

            良寛

2019年2月19日火曜日


花をのみ 待つらん人に山里の 
ゆきまの草の 春を見せばや
  
                   藤原家隆

2019年2月18日月曜日

希望



「自分自身の外に希望を見つけようとするのは、間違いだと思う。」 

            
              アーサー・ミラー(1915-2005)

2019年2月17日日曜日


君の帰り待つ窓に雨滴流れつつ
見知らぬ街の夜となりゆく

朝の陽に未央柳は黄に濁りて
とどまらぬものを負えるかがやき  

             川口美根子(1929-2015)

2019年2月16日土曜日

ほたる


蛍という虫のいのちの一つまた一つおのれを照らすかなしさ

           田井安曇(1930-2014)

2019年2月15日金曜日

浅間山


古本屋で見つけて、
なんだか気になったので、買った。
小説家の吉田弦二郎(1886 - 1956)の随筆集。
昭和二十四年三月発行。
装丁は、恩地孝四郎。
戦争直後の出版らしく、紙質は非常に悪い。
表紙の水彩画に、手作り感が溢れている。
それで、買った。
吉田弦二郎、当時、著名な作家であったようだ。

末尾近くに、昭和十二年に42歳で亡くなった、吉田の妻、明江さんの句が、いくつか載っていた。

  獨りゐて夜の雨きくや浅間山
                 吉田明江
              

2019年2月14日木曜日

           やまだりお
すこしだけ 雪が降った日に
すこしだけ いいことがあって
おいしい食べ物を 食べて
だれかと 笑って 話して
そういう 日が
ダンゴムシにも あって
だれかと ちがうから
だれかに きらわれる
そういうことが あっても
だれかに やさしくされても 
なにがあっても なにもなくても
ダンゴムシは 気にしない
明日は 来ないかも しれないから

「ありとあらゆる どんなものも ことも
なにもかもが すべて かならず 過ぎ去る
だから なまけないで 生きなさい」
          (ブッダ最後の言葉) 

2019年2月8日金曜日


きれいな石 ひろった
ときどき 出して 見る

わたし だんごむし なので
石 どれも ともだち

わたし だんごむし なので
こんなで いいだろう と

こんなに まるまって 
これで いいだろう と

だんごむし おもう
 
         やまだりお

( あのダンゴムシの絵を描いたときは、この石のことを忘れていたけれど、
今見ると、あの丸まったダンゴムシの絵にそっくりなんだよね。
偶然なのか、あるいは無意識か、いずれにせよ、なんか、うれしいです)

2019年2月5日火曜日

中川


われひとり画室の廊下あゆみをり庭のしら梅いまさかりなり

もしやわれ死んでゐないかしんぶんの死亡広告みる時があり

           中川一政(1893-1991)

2019年2月4日月曜日

薄氷


梅が咲いて薄氷がはった朝
いつものホームレスがいない


        やまだ りお

2019年2月3日日曜日

ダンゴムシ 

          02/04/2019 山田リオ

ダンゴムシは

かおが ちいさくて よくみえないので

ひょうじょうが わからない

うれしいのか かなしいのか

おこっているのか わらっているのか

ないているのか わからない


ダンゴムシは じぶんの なまえが わからない

じぶんが ダンゴムシ だということも

しらないし

いま せかいが どんなことになっていても

おそろしく あつい ながい なつがきても 

なんだか よく わからなくて

だまって まるまったり のびたり

うごいたり とまったり する


かなしくても つらくても

びょうきになっても

じぶんが もうすぐ おわるかもしれない

そういうときも ダンゴムシは 

なにも いわない

ただ うごいたり とまったり

まるまったり のびたりしながら

どこか よくわからないところにむかって

いきる 

ダンゴムシは きょうも いきる Copyright ©2019RioYamada

       

2019年2月2日土曜日

待つ

(略)
花子 大きな声で何か言ったわ。
   私、あんな大きな声でものをいう人きらい。

実子 そうね。・・・私もきらい。

花子 (再び扇を弄びつつ)
   待つのね。待って、待って、
   ・・・そうして日が暮れる。

実子 あなたは待つのよ。・・・私は何も待たない。

花子 私は待つ。

実子 私は何も待たない。

花子 私は待つ。・・・こうして今日も日が暮れるのね。

実子 (目をかがやかして)すばらしい人生!

         ---幕---

   近代能楽集より「斑女」、三島由紀夫(1925-1970)