万太郎
久方の空いろの毛糸編んでをり
門の辺の八つ手の霜をおもふかな
しろきものおちて来りぬ去年今年 去年(こぞ)
うつぶせにねるくせつきし昼寝かな
枯野はも縁の下までつづきをり
煮大根を煮かへす孤独地獄なれ
たましひの抜けしとはこれ、寒さかな
雨凍てて来るものつひに来しおもひ
死んでゆくものうらやまし冬ごもり
何おもふ梅のしろさになにおもふ
一生を悔いてせんなき端居かな 端居(はしゐ)
すべては去りぬとしぐるる芝生みて眠る
世に生くるかぎりの苦ぞも蝶生る
冬ごもり閉じてはあける目なりけり
さがす人ここにも見えず走馬灯
こしかたのゆめまぼろしの花野かな こしかた(来し方)
久保田万太郎
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