2018年3月25日日曜日

西行



Copyright © 2018Rio Yamada
わきて見ん老木は花もあはれなり
今いくたびか春にあふべき

たぐひなき思ひいではの桜かな
薄紅の花のにほひは

                     西行

           老木(おいき)     
           薄紅(うすくれなゐ)

2018年3月23日金曜日

勝利 再掲載

■2006/02/09 (木) Vitoriosa

Vitoriosa
                  Vitor Martins

ブラジル現代の詩人、ヴィトル・マルティンスの詩、「勝利」です。
この詩には、イヴァン・リンスが曲を書き、歌い、CDアルバム「CANTANDO HISTORIAS」に入っています。
でも、日本語訳では、美しいブラジルの言葉の響きが、すべて失われてしまうのが残念です。
どんな詩でも、詩は、戯曲と同じように、できれば原語で、声に出して読んで、初めて意味を持つものなんだと思います。

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「勝利」  
         ヴィトル・マルティンス、訳:山田リオ

あなたの、気持ちのよい笑い声が欲しい
あなたは、それをどうやって見つけたのか
そう、人生は、素晴らしい物であるはずだ
人生は、素晴らしい物であるはずだ

あなたの、めちゃくちゃな明るさが欲しい
何一つ持っていないことが、勝利だ
それを学ぶことの苦痛も、喜びも

あなたが持つ、わずかな純潔が欲しい
あなたが持つ、狂気の自由が欲しい
過ぎ去って行くことへの、強い意志が欲しい
あなたの限界と
そして、あなたが行ったあとに残された航跡が
欲しい

(All rights reserved 、2006Rio Yamada
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2018年3月21日水曜日

西行


なにとなく春になりぬと聞く日より
心にかかるみ吉野の山
                    西行法師

2018年3月6日火曜日

These Foolish Things

「こんなつまらない物たちが」  
         歌詞:エリック・マシュウィッツ(1901 –  1969、英国)
                         訳:山田リオ     

もう ひとりにしてほしい
わたしを自由にしてほしい
私達をつなぎ止めていたものは
今もまだ 二人のまわりにあって
わたしには 出口が見えない
あんな小さな つまらない物たちが
今もわたしに 幸せや痛みを与える

口紅の付いたタバコの吸い殻
どこか素敵な場所へ行く航空券
そしていまも私の心には翼があって
こんなつまらない物たちが
わたしにあなたを思い出させる

隣のアパートから聞こえてくる ピアノの音
切れ切れの言葉でにあなたに伝えた わたしの気持ち
公園の ペンキを塗ったブランコ
そんなつまらない物たちが
わたしにあなたを思い出させる

あの日あなたはやって来て わたしを征服した
そのとき わたしは運命のことを思った
三月の風が わたしの心をダンサーに変えた
電話が鳴る でも今は 誰も答えない
あなたの幻は まだ消えないで
こんなつまらない物たちが
わたしにあなたを思い出させる

早咲きの水仙の花 長文の心躍る電報
小さなコーナーテーブルの ロウソクの炎
そして今でも わたしの心には翼があって
こんなつまらない物たちが
わたしにあなたを思い出させる 

教会の鐘が聞こえていた 夕暮れの公園
カモメが群れていた セーヌの川岸
美しかった春
そんなつまらない物たちが
わたしにあなたを思い出させる

なんて不思議 なんて素敵
いまこんなふうにあなたに会えるのは
わたしをやさしい気持ちにしてくれる
わたしの大切な物たちが
あなたをそばに連れてきてくれる

からっぽの夜更けの駅で聞いた
機関車の蒸気の音
ダンスパーティーの招待状のそばに
脱がれたままの 絹のストッキング
ああ あなたの幽霊は今もわたしを離れない
こんなつまらない物たちが
わたしにあなたを思い出させてくれる

枕のあたりに漂っていた くちなし香水の香り
1キロでたった7フランだった野イチゴ
そして今も 私の心には翼があって
こんなつまらない物たちが
わたしにあなたを思い出させる

グレタ・ガルボの微笑みと 薔薇の香り
夜更けにバーが閉まる時の ウェイターの口笛
ビング・クロスビーが歌う あの歌 
そんなつまらない物たちが
あなたを思い出させてくれる

なんて不思議 なんて素敵
いまこんなふうにあなたに会えるのは
わたしをやさしい気持ちにしてくれる
わたしの大切な物たちが
あなたをそばに連れてきてくれる

焚火でくすぶっていた枯葉の匂い 蒸気船の汽笛
 通りを行く恋人たちが 夢見るように歩いて行った
ああ あなたの幽霊は 今もわたしを離れない
こんなつまらない物たちが
あなたを思い出させてくれるCopyright © 2004Rio Yamada

2018年3月3日土曜日

万太郎



久方の空いろの毛糸編んでをり

門の辺の八つ手の霜をおもふかな

しろきものおちて来りぬ去年今年  去年(こぞ)

うつぶせにねるくせつきし昼寝かな

枯野はも縁の下までつづきをり

煮大根を煮かへす孤独地獄なれ

たましひの抜けしとはこれ、寒さかな

雨凍てて来るものつひに来しおもひ

死んでゆくものうらやまし冬ごもり

何おもふ梅のしろさになにおもふ

一生を悔いてせんなき端居かな   端居(はしゐ)

すべては去りぬとしぐるる芝生みて眠る

世に生くるかぎりの苦ぞも蝶生る

冬ごもり閉じてはあける目なりけり

さがす人ここにも見えず走馬灯

こしかたのゆめまぼろしの花野かな   こしかた(来し方)

                    久保田万太郎