2012年9月29日土曜日

尾形亀之助 ①

■2008/08/17 (日) 
            尾形亀之助(1900~1942)
「無題詩」
 

夜になると訪ねてくるものがある

気づいて見ると
なるほど毎夜訪ねてくる変んなものがある

それは ごく細い髪の毛か
さもなければ遠くの方で土を堀りかへす指だ

さびしいのだ
さびしいから訪ねて来るのだ

訪ねて来てもそのまま消えてしまつて
いつも私の部屋にゐる私一人だ

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「彼の居ない部屋」
           
部屋には洋服がかかつてゐた

右肩をさげて
ぼたんをはづして
壁によりかかつてゐた

それは
行列の中の一人のやうなさびしさがあつた
そして
壁の中にとけこんでゆきさうな不安が隠れてゐた

私は いつも
彼のかけてゐる椅子に坐つてお化けにとりまかれた

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「夜の花をもつ少女と私」          

眠い――
夜の花の香りに私はすつかり疲れてしまつた

××
これから夢です

もうとうに舞台も出来てゐる
役者もそろつてゐる
あとはベルさえなれば直ぐにも初まるのです

べルをならすのは誰れです
××

夜の花をもつ少女の登場で
私は山高をかるくかぶつて相手役です

少女は静かに私に歩み寄ります
そして

そつと私の肩に手をかける少女と共に
私は眠り――かけるのです

そして次第に夜の花の数がましてくる


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