2017年11月18日土曜日

雪渡り

■2010/12/25 (土) 雪渡り
「雪渡り」            宮澤賢治


雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、
空も冷たい滑らかな青い石の板で出来てゐるらしいのです。
 「堅雪かんこ、しみ雪しんこ。」
お日様がまっ白に燃えて百合の匂を撒きちらし又雪をぎらぎら照らしました。
木なんかみんなザラメを掛けたやうに霜でぴかぴかしてゐます。
 「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」
四郎とかん子とは小さな雪沓をはいてキックキックキック、野原に出ました。
こんな面白い日が、またとあるでせうか。
いつもは歩けない黍の畑の中でも、すすきで一杯だった野原の上でも、
すきな方へどこ迄でも行けるのです。平らなことはまるで一枚の板です。
そしてそれが沢山の小さな小さな鏡のやうにキラキラキラキラ光るのです。(後略)

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