2014年3月19日水曜日
あの日 311短歌
この海が いつもと違う顔をして
町中のみこみ 静かに去った 新妻愛美
黒い波 夫 手を離しのまれゆき
私はワタシは ムンクになった
あまりにも よく似た人を追いかけて
いつまで続く この寂しさは 山崎節子
あの道も あの角もなし 閖上一丁目
あの窓もなし あの庭もなし
生と死を 分けたのは何 いくたびも
問いて見上げる三日目の月
かなしみの 遠浅をわれはゆくごとし
十一日の度(たび)の冷たさ
「届かなかった声がいくつもこの下に
あるのだ」 瓦礫を叩くわが声 斉藤梢
寂しげに繋ぎおかれしわが犬を
はなしてやりぬ 生きのびろよと 半谷八重子
差し込まむ 穴無き鍵の捨てられず
流されし家の玄関のカギ
遺体写真 二百枚見て水を飲む
喉音たてずに ただゆっくりと 佐藤成晃
鍵をかけ 箱にしまったあの頃を
掌で包み 生きるこれから 渡邊穂
いつ爆ぜむ青白き光深く秘め
原子炉六基の白亜連なる
廃棄物は地元で処理だ? ふざけるな
最終処分場にされてたまるか 佐藤祐偵
ひるがえる 悲しみはあり三年の
海、空、山なみ ふるさとは 青
ふるさとを 失いつつあるわれが今
歌わなければ 誰が歌うのか 三原由紀子
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