2016年8月5日金曜日

住宅顕信


ポストが口あけている雨の往来

レントゲンの早春の冷たさを抱く

点滴びんに散ってしまったわたしの桜

深夜、静かに呼吸している点滴がある

許されたシャワーが朝の虹となる

雨音にめざめてより降りつづく雨

降れば一日雨を見ている窓がある

歩きたい廊下に爽やかな夏の陽がさす

点滴と白い月とがぶらさがっている夜

「一人死亡」というデジタルの冷たい表示

秋が来たことをまず聴診器の冷たさ

        住宅顕信(すみたくけんしん)(1961-1987)

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