2023年10月25日水曜日

秋草光


 


秋が くると いふのか

なにものとも しれぬけれど

すこしづつ そして わづかにいろづいてゆく、

わたしのこころが

それよりも もつとひろいもののなかへくづれて ゆくのか



                                  八木重吉 (1898~1927)
© rio yamada


2023年10月8日日曜日

雨の匂い

雨の匂いのする 午後

明日はきっと 雨

           山田リオ

© rio yamada


2023年10月6日金曜日

  ■2005/10/28 (金)         山田リオ 

気がついたら いつのまにか わたしは

母よりも 年上になっていた

これから もし わたしが生きていれば

毎年 一歳ずつ 母より年上になっていくわけで

それは 不思議なことのようにも思える

親戚の一部から 無視されていた母は


口数が少なくて 他の人とは どこか違っていた

でも わたしにとって 彼女はいつも 

ただひとりの母だったし 今も それに変わりはない

むしろ 自分は 男でありながら

だんだん 母に似た人間になっていく気がする

わたしは 父をおぼえていないので

母とわたしは この世で唯一の親であり 子であり

歳を重ねることで 母に似ていくのは 当然のことかもしれない

母は 物の手触りを愛する人だった 何かに目をとめると

とことこ歩いて 道を横切り 手を触れずにいられなかった

それは 角の教会の 壁の石積みだったり

古びて朽ちかけた 板塀だったりするのだが

彼女は立ち止まり 目でいつくしんでから そっと手を触れた

母に「勉強しろ」 と言われたことは 一度もなかった

将来や就職について 訊かれたことも 一度もなかった

でも 彼女は ぼくが 何か 好きなことに夢中になっているのを

石や板塀を見るのと同じ あの まなざしで

曲がり角から覗き見るように 見ていた

お母さん わたしは だんだん あなたに似てきました

そして あなたが何を思い なにを感じて 生きていたのか

すこしだけ わかってきたような 気がするのです

いつか あなたと 再会できる日が来たら

あなたに そっくりな人間に生んでくれて ありがとう

そう 言いたいです         Copyright©2005RioYamada
rio yamada photo


2023年10月4日水曜日

姓名

 姓は苗字、名は名前、英語だと、Last name and first name.

ああ、そうだ。surname, given name という言い方もある。

surname が苗字で、given name が・・

でも、「下の名前」という言い方には、なんだろう、違和感がある。

ぼくの名前の「リオ」は、ポルトガル語、またはスペイン語で「河」という意味だ。

そして、河は、海に向かって流れて行く。そう。いつか、海に出会う。

だから何だって? だから、ね、そういうことなのさ。

ところで、一生の間には、一度くらい、

この写真のような日没に出会う幸運も、あるんだよね。 Rio

© rio yamada 



2023年10月3日火曜日

あの音楽

■2010/05/20 (木) 

音楽のことを書きます。
大切な音楽とは、どんなものか、
それは、きっと、一人一人にとって、違うものなんでしょうね。
いや、そうであることを願います。

わたしにとって大切な音楽は、ジャンルで呼べるようなものではありません。
世界に、たった一つの、「あれ」です。
それは、歌詞も無く、まあ、かなり地味なものです。

その音楽は、自分が病床にあって、もうダメだ、という時に、
枕元にすわっていてくれて、静かに話しかけてくれる、そういうものです。

もうどうしようもなくて、あきらめて、ビルの屋上から跳ぼうという、
その時、後ろから、やわらかく抱きとめてくれる、
それが、わたしにとっての、あの音楽です。

どんな音楽かって?
おしえない。
誰が作曲したか? おしえない。
わたしが、どんなに酔っ払っていたって、
おしえない。
とても大切なんだから。

        山田りお  Copyright©2010RioYamada
© rio yamada