つまづきて振り返る道に何もなし
わが来しあとをうす日さしをり
北小路功光(1901-1989)
この小路の小さき石をけりながら
通りゆくことも約束なりき
山崎方代(1914-1985)
■2010/12/25 (土) 雪渡り
「雪渡り」 宮澤賢治
雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、
空も冷たい滑らかな青い石の板で出来てゐるらしいのです。
「堅雪かんこ、しみ雪しんこ。」
お日様がまっ白に燃えて百合の匂を撒きちらし又雪をぎらぎら照らしました。
木なんかみんなザラメを掛けたやうに霜でぴかぴかしてゐます。
「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」
四郎とかん子とは小さな雪沓をはいてキックキックキック、野原に出ました。
こんな面白い日が、またとあるでせうか。
いつもは歩けない黍の畑の中でも、すすきで一杯だった野原の上でも、
すきな方へどこ迄でも行けるのです。平らなことはまるで一枚の板です。
そしてそれが沢山の小さな小さな鏡のやうにキラキラキラキラ光るのです。(後略)
紅の深染めの衣色深く染みにしかばか忘れかねつる
作者不詳 万葉集
紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも
大海人皇子
万葉集