降りやみし雪うすうすと受けとめし朴の葉っぱのそのやさしさよ
移りゆく冬の時雨にぬれながら石青々と静まりかえる
そして夜は雨が激しく降ってきてただ暗がりにひとり寝るだけ
外燈のかさをかこみて雪が降るただそこだけを舞っているのだ
約束があって生まれて来たような気持になって火を吹き起こす
とぼとぼと歩いてゆけば石垣の穴のすみれが歓喜をあげる
一本の傘をひろげて降る雨をひとりしみじみ受けておりたり
遠い遠い空をうしろにブランコが一人の少女を待っておる
小海線の電車の窓からふんわりと麦藁帽子がころげ降りたり
人間はかくのごとくに悲しくてあとふりむけば物落ちている
シグナルの青と赤とのまたたきよ平和はここに溢るるばかり
ああここはこの世の涯かあかあかと花がだまって咲いている
こんな夜にかぎって雨が降り出でて空の徳利を又ふってみる
山崎方代(1914-1985)
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