花の色染みたる脳の朝寝かな
ゆふざくら逢うてたちまち眠るなり
写真焼く焔むらさき春の暮
猫死んで桜月極駐車場
桜餅餡透けて雨兆すなり
思ひ寝のあと草餅のやはらかき
草餅の雨の匂ひのしてゐたり
梅雨寒や高座布団の芯かたき
薔薇切って空気いきなり濃くなりぬ
衰へて明るき脳や葱の花
さびしさや焼蛤の噴きこぼれ
焼飯の卵おだやか海の家
オルガンの音ずれてゐる暑さかな
蝉の穴鬱の極みも過ぎにけり
病む人の爪透きとほるしらが葱
寒鯉に纏はる水の粘りかな
遠くまで行く切符なり冬の雲
紙ほどの薄さのこゑの冬鴎
抽斗の闇の矩形の寒さかな
藤山直樹(1953-)
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