山田リオ
Copyright ©2014RioYamada
泉筆。萬年筆。
万年どころか十年も使わずに
でも、捨てることもできず
何度引越しても、ついてくる
じゅうねんひつ、じゃない、まんねんひつ
思い立って、文房具店に行った
水で洗浄すれば、使えるという
きれいに洗ってもらって
ロイヤル・ブルーのインクも買った
百年筆じゃなくて、マンネンヒツ
さて、何を書くか
手紙はメールだからな
もしくはメール添付だから
ペンでは書かないな
日記は、ブログだからな
千年筆でもない、万年筆
そうだ、買い物リストを書こう
ミルク、ヨーグルト、
コーヒー豆、フィルター
ゴミ袋、流しのゴミネット
でも、なにか忘れてる
今までは右上にある
黒のボールペンで書いてた
買い物リストだけど
これからは、キャップを取って
ロイヤル・ブルーのインクで書こう
一年筆でもない、万年筆
いろいろ書いてみたけれど
やっぱり、名前を書いてみよう
好きな人なら、熊谷さん、谷中さん
永井さん、笹井さん、内田さん、平山さん
いくら書いても、気持ちがよくて
きれいに書ける、万年筆。
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山田リオ
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あなたは知っていますか
北アメリカのセミは、生まれてから
17年間を土の中で暮らし
17年目の夏に地上に出てきて
歌い、出会い、交尾し、卵を産み
そして数日後には死んでいくことを
あなたが「気持ち悪い」、というミミズは
森に落ちた枯葉を食べ、排泄し
地を栄養が溢れる豊かな土壌に変える
おかげで木々は深く根を張り、果実をつける
食べ物を与えてくれるだけではなく
ミミズは土石流の発生をも防いで
多くの人間の生命を守ります
それでもあなたは蟲を嫌いですか。そうですか。
でも、汚い糞ころがしのセンチコガネも
臭い匂いを出すハンミョウという蟲も
すっかり少なくなってしまったヤマトタマムシも
あなたが愛する高価な宝石なんかより
わたしはよっぽど美しいと思います
そういう美しさはお金では買えません
そしてなにより大事なことは
あなたがどう思うかに関係なく
どんな蟲も、ミミズも蛇もトカゲも
あなたが「カワイイ」と騒ぐ猫や犬も
あなたが悲鳴を上げ逃げるゴキブリも
みんなみんな、あなたと同じ、生き物です
人間もまた、生き物です。「迷惑だ」と言う蟲もいるでしょうが。
鳥獣蟲魚みんなみんな、ありとあらゆる生き物すべて
有名大学を出ないし正社員でも医者でも役人でもないけれど
あなたやみんなと一緒に、この地球という危うい舟に、たまたま同乗し
ほんのしばらくの間、どこかに向かって、共に旅をしている
そして、この舟が滅びるときには、みんなもれなく運命を共にする
仲間で、同類で、巡礼同士、そして道連れではありますが
あいつら、生き物どものタマシイは、私たち人間にくらべれば、はるかに清浄です。
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、
幸運にも、偶然と神秘の間のどこかに想像力が横たわる。
想像の力を削ごうと、或いは完全に抹殺しようとする多くの人間が存在するにも拘わらず、
想像力は私たちの自由を守る、唯一のものだ。 ルイス・ブニュエル
村夜
霜草蒼蒼蟲切切
村南村北行人絶
独出門前望野田
月明蕎麦花如雪
白楽天
山田リオ
もうすぐきっと雨が来る
そういう匂いがしているから
これはたしかに雨の前触れ
確信を持ってそう言おう
雨が来たなら銀杏はみんな
散ってしまうだろうけれど
巡る季節が今日のうちに
旅立つまえの挨拶をする
もうすぐきっと雨が来て
そして季節は巡っていく
こんなに明るい曇りの朝
ここでひとりで微笑んでいる
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