眠り(第二部)
山田リオ
あれから、しばらくの間
だれに肩を貸すこともなく
電車に乗ったりしていたのだが
今朝、しばらくぶりで、動きがあった
早朝、六時すぎ、電車に乗り
空席があったので、そこに座った
わたしのすぐ右にはドアがあって
左には、中学生の女の子が一名
その中学生の、うつむいた頭が
重そうに前に垂れ、それから右に傾き
わたしの肩にではなく、左上腕の前側に触れると
はっと気がついて、体勢を立て直した
しかし、眠気には勝てないらしく
二度、三度、抵抗したあとで、とうとう
あきらめたように、頭の重みを
わたしの左腕に預けてきた
それは、やわらかく、おだやかな重みで
彼女の眠りもまた、おだやかなものだったので
その眠りを受け止めているわたしもまた
同じように、やさしい気持ちになった
電車はやがて、目的の駅につき
わたしは立ち上がって、ドアに向かった
すると、眠っていた少女も立ち上がり
わたしのあとから降りるようだったが
そのあとのことは、知らない。
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