2014年6月17日火曜日

尾崎放哉 ⑨


              尾崎放哉(1885-1926)
               (おざきほうさい、無季自由律俳句)

流るる風に押され行き海に出る

海がまつ青な昼の床屋にはいる

皆働きに出てしまひ障子あけた儘の家

言ふ事があまり多くてだまつて居る

古足袋のみんな片足ばかり

鐘ついて去る鐘の余韻の中
 

炎天の底の蟻等ばかりの世となり
 

雨に降りつめられて暮るる外なし御堂
 

雨の幾日かつづき雀と見てゐる
 

降る雨庭に流をつくり侘び居る
 

何も忘れた気で夏帽をかぶつて
 

雀のあたたかさを握るはなしてやる
 

曇り日の落葉掃ききれぬ一人である
 

きたない下駄ぬいで法話の灯に遠く坐る
 

ゆるい鼻緒の下駄で雪道あるきつづける
 

久し振りの雨の雨だれの音
                   尾崎放哉
(1885-1926)

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