尾崎放哉 ⑨
尾崎放哉(1885-1926)
(おざきほうさい、無季自由律俳句)
流るる風に押され行き海に出る
海がまつ青な昼の床屋にはいる
皆働きに出てしまひ障子あけた儘の家
言ふ事があまり多くてだまつて居る
古足袋のみんな片足ばかり
鐘ついて去る鐘の余韻の中
炎天の底の蟻等ばかりの世となり
雨に降りつめられて暮るる外なし御堂
雨の幾日かつづき雀と見てゐる
降る雨庭に流をつくり侘び居る
何も忘れた気で夏帽をかぶつて
雀のあたたかさを握るはなしてやる
曇り日の落葉掃ききれぬ一人である
きたない下駄ぬいで法話の灯に遠く坐る
ゆるい鼻緒の下駄で雪道あるきつづける
久し振りの雨の雨だれの音
尾崎放哉(1885-1926)
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