2014年3月8日土曜日

桜の句、歌


●「夜桜」というものが昔はあったそうな。
夜の闇の中に咲いている、やわらかほの白い桜。
日本人が失ってしまった、最も大切なものの一つ、「闇」(やみ)。
ライトアップなどというものが存在しなかった昔の春夜は、
どんなにか、情緒あふれるものだったことだろうか。      山田 

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 やすらへば手の冷たさや花の中   岡本浜浜
 


花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ

娘(こ)がいねば夕餉もひとり花の雨    杉田 久

 


行き暮れて木の下蔭を宿とせば花や今宵の主ならまし       薩摩守 忠度


わが胸をのぞかば胸のくらがりに桜森見ゆ吹雪きゐる見ゆ 
 
咲き重なる花の奥なる花のいろ更にましろく冷えびえとせり
 
しんしんと頭の底にも陽は差してそこも桜の無惨の白さ
 
鬼も花もまさ眼に見えねばめつむりて眼の奥の闇しかと見つむる  河野 裕子  


散るまへの桜の大樹いだかんと河原へゆけば吾を抱く風                       笹井宏之


天空をながるるさくら春十五夜世界はいまなんと大きな時計

警報機鳴るやもしれぬうつし世のさくらのやみのにほふばかりを   永井陽子
  

春風の花をちらすと見る夢は覚めても胸のさわぐなりけり


世の中を思へばなべて散る花のわが身をさてもいずちかもせむ
   
花みればそのいはれとはなけれども心のうちぞ苦しかりける


願はくは花の下(もと)にて春死なむそのきさらぎの望月のころ

                               西行法師   



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