山田リオCopyright©2012RioYamada
別れは、いつか、やってくる
たとえ残されたものが
人間ではなかった場合も
鳥は鳥、獣は獣なりに
それぞれの感情を抱いて
自分の生涯を生きてゆく
しかし、相手が物であった場合には
そのへんの事情は、ちがってくる
つまり、持ち主が死ねば
物は、残されるわけだから
かってに歩いたり飛んだりして
どこかに行くこともできない
さて、この大きな、重い、青いタイルは
ずっと昔に、ある田舎町で偶然に出会い
生活を共にすることになった
見れば見るほど、得体が知れない
ある意味、不気味でさえあるのだが
いつも気がつけば傍らにあった
他の人にとって、このタイルは
ゴミに見えるかもしれない
ぼくが逝ったあとで、だれが手にするにせよ
この、金銭的には無価値な瀬戸物に
ぼくのような馬鹿げた愛着を持つ人は
おそらく、いないだろう
こういうわだかまりは
なにかを、または誰かを
愛してしまった者の宿命なのだが
人はだれも、旅立つときには
その大切な人や、物を、残して行くしかない
滑稽なことに、物には思いはないのだから
人がいくら物を愛しても、別れを惜しんでも
それはいつでも、人の片思いに終わる
人の勝手な思いなんか、物の知ったことではない。
(All rights reserved 、2012 Rio Yamada
このHPの全ての記事は著作権法によってコピー、転載を禁止されています。)
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