2019年3月28日木曜日

脱皮

わたしは、過去から逃れたいと思っている。
わたしは、見知らぬ風景や環境が好きだ。
わたしが愛するのは、設定、雰囲気、様式の転換と、
わたし自身の変容、全ての形で、過去の殻を脱ぎ捨てることだ。

Rio Yamada photo

         アナイース・ニン(1903 - 1977)
    訳:山田リオ

2019年3月26日火曜日

だれひとり



咲いてしまった。
止められなかった。
誰ひとり、止めることができなかった。
花は、力ずくで、咲いてしまった。
今となっては、もう、遅い。

                       山田リオ

花


花朽ちて沈みてゆきし野の井戸の無明無限の水深想ふ
       
           河野 裕子(1946 - 2010)

2019年3月25日月曜日

花冷え


花冷えの箸まなかつをむしりけり

花冷えのマスクをかけて眉の濃き

花冷えの閉めてしんかんたる障子

花冷えの打つだけの手はうちにけり

花冷えの雨にならんとしてなれず

          久保田万太郎(1890-1963)

2019年3月23日土曜日

花冷え


花冷のなにゆゑとなき昼の酒

            藤田湘子(1926 - 2005)

2019年3月21日木曜日

円空

rio yamada photo

遊ぶらん浮世の人は花なれや春の始めの鶯の声

            円空(1632-1695)

2019年3月20日水曜日

空


この坂を登れば夏が来そうな


       住宅顕信(1961 - 1987)

2019年3月15日金曜日

方代


くりかえしつたうる朝の報道の事実といえど信じる勿れ

                              山崎方代(1914‐1985)

2019年3月14日木曜日

木

      
       (略)

ウラディミール: ズボンを穿けよ。

エストラゴン:  なんだって?

ウラディミール: ズボンを穿けって。

エストラゴン:  ズボンを脱げって言うのか?

ウラディミール: ズボンを穿け。

エストラゴン: (ズボンが落ちていることに気が付              いて)
         そうだな。
        (ズボンを引き上げる)

ウラディミール: さてと。行くか?

エストラゴン:  ああ。行こう。
        (二人とも、動かない)
        
             幕

 (サミュエル・ベケット「ゴドーを待ちながら」より)  
                 訳:山田リオ

2019年3月12日火曜日

2019年3月10日日曜日

未来


「わたしは 未来に興味がある
なぜなら そこは わたしがこれからの人生を過ごす場所だから」

             ウディー・アレン(1935 ~)

2019年3月8日金曜日

短いの三つ


                            
                



                             07/22/2013          山田リオ


どんなに歩いてもたどり着けない場所に背をむけて歩けば微笑

どんなに上手な言い訳をしても私が裏切っているのは自分自身だ

ほら あのバス停の向こうがゴール いや あれはただの蜃気楼
              
                 Copyright ©2013RioYamada

2019年3月7日木曜日

火

rio yamada photo
             山田リオ                              
 いろりのそばに横たわって
火が燃えるのをみつめている
火の あたたかい色だけを見て
炭がはぜる音を聴いている
何も考えず
何も思わず
火を見ている

縄文人も こんなふうに
夜のなかで 火を見ていたんだろう
なにも考えず
なにも思わず
じっと
火を見ていたんだろう
      Copyright ©2019RioYamada

2019年3月2日土曜日

雨

花にまだ間のある雨に濡れにけり

        久保田万太郎

2019年3月1日金曜日

数式


やはらかいレンズがたくさん浮いてゐる空のすみから春がはじまる

開いたら袋の中で割れてゐる鳩サブレーのまるいおなかが

コーヒーの香りをデスクに置いたまま朝までひとりの余白に眠る

                                    
                   大西久美子

           (「イーハト-ブの数式」より)

2019年2月28日木曜日

節句


紙雛や箪笥の上のまどあかり
         
             永井荷風(1879-1959)

2019年2月25日月曜日

昼顔


亡き人がかたはらに立つ夏の径
ひるがほの花がすぐそばに来る

                 小島ゆかり

2019年2月22日金曜日

草の春

rio yamada

土と石ころばかりの地面
路地の影の狭いところに
おおばこがいくつも
芽を出した

2019年2月21日木曜日

無言


rio yamada
今日一日だけ
なにも言わないで
だまって
ただ にこにこしていよう
そうおもった
でも
できなかった

          やまだりお

2019年2月20日水曜日

良寛


うたもよまむ てまりもつかむ のにもでむ
こころひとつを さだめかねつも

            良寛

2019年2月19日火曜日

春


花をのみ 待つらん人に山里の 
ゆきまの草の 春を見せばや
  
                   藤原家隆

2019年2月18日月曜日

希望



「自分自身の外に希望を見つけようとするのは、間違いだと思う。」 

            
              アーサー・ミラー(1915-2005)

2019年2月17日日曜日

雨


君の帰り待つ窓に雨滴流れつつ
見知らぬ街の夜となりゆく

朝の陽に未央柳は黄に濁りて
とどまらぬものを負えるかがやき  

             川口美根子(1929-2015)

2019年2月16日土曜日

ほたる


蛍という虫のいのちの一つまた一つおのれを照らすかなしさ

           田井安曇(1930-2014)

2019年2月15日金曜日

浅間山


古本屋で見つけて、
なんだか気になったので、買った。
小説家の吉田弦二郎(1886 - 1956)の随筆集。
昭和二十四年三月発行。
装丁は、恩地孝四郎。
戦争直後の出版らしく、紙質は非常に悪い。
表紙の水彩画に、手作り感が溢れている。
それで、買った。
吉田弦二郎、当時、著名な作家であったようだ。

末尾近くに、昭和十二年に42歳で亡くなった、吉田の妻、明江さんの句が、いくつか載っていた。

  獨りゐて夜の雨きくや浅間山
                 吉田明江
              

2019年2月14日木曜日

花

           やまだりお
すこしだけ 雪が降った日に
すこしだけ いいことがあって
おいしい食べ物を 食べて
だれかと 笑って 話して
そういう 日が
ダンゴムシにも あって
だれかと ちがうから
だれかに きらわれる
そういうことが あっても
だれかに やさしくされても 
なにがあっても なにもなくても
ダンゴムシは 気にしない
明日は 来ないかも しれないから

「ありとあらゆる どんなものも ことも
なにもかもが すべて かならず 過ぎ去る
だから なまけないで 生きなさい」
          (ブッダ最後の言葉) 

2019年2月8日金曜日

石


きれいな石 ひろった
ときどき 出して 見る

わたし だんごむし なので
石 どれも ともだち

わたし だんごむし なので
こんなで いいだろう と

こんなに まるまって 
これで いいだろう と

だんごむし おもう
 
         やまだりお

( あのダンゴムシの絵を描いたときは、この石のことを忘れていたけれど、
今見ると、あの丸まったダンゴムシの絵にそっくりなんだよね。
偶然なのか、あるいは無意識か、いずれにせよ、なんか、うれしいです)

2019年2月5日火曜日

中川


われひとり画室の廊下あゆみをり庭のしら梅いまさかりなり

もしやわれ死んでゐないかしんぶんの死亡広告みる時があり

           中川一政(1893-1991)

2019年2月4日月曜日

薄氷


梅が咲いて薄氷がはった朝
いつものホームレスがいない


        やまだ りお

2019年2月3日日曜日

ダンゴムシ 



          02/04/2019 山田リオ

ダンゴムシは

かおが ちいさくて よくみえないので

ひょうじょうが わからない

うれしいのか かなしいのか

おこっているのか わらっているのか

ないているのか わからない


ダンゴムシは じぶんの なまえが わからない

じぶんが ダンゴムシ だということも

しらないし

いま せかいが どんなことになっていても

おそろしく あつい ながい なつがきても 

なんだか よく わからなくて

だまって まるまったり のびたり

うごいたり とまったり する


かなしくても つらくても

びょうきになっても

じぶんが もうすぐ おわるかもしれない

そういうときも ダンゴムシは 

なにも いわない

ただ うごいたり とまったり

まるまったり のびたりしながら

どこか よくわからないところにむかって

いきる 

ダンゴムシは きょうも いきる Copyright ©2019RioYamada