2019年3月30日土曜日

保険


はつなつのゆふべひたひを光らせて保険屋が遠き死を売りにくる 

                                                    塚本 邦雄(1920 - 2005) 

2019年3月29日金曜日

だれひとり

 
散ってしまった。

止められなかった。

誰ひとり、止めることができなかった。

花は、力ずくで、散ってしまった。

今となっては、もう、遅い。

                       山田リオ

2019年3月28日木曜日

脱皮

わたしは、過去から逃れたいと思っている。
わたしは、見知らぬ風景や環境が好きだ。
わたしが愛するのは、設定、雰囲気、様式の転換と、
わたし自身の変容、全ての形で、過去の殻を脱ぎ捨てることだ。

         アナイース・ニン(1903 - 1977)
    訳:山田リオ

2019年3月26日火曜日

だれひとり



咲いてしまった。
止められなかった。
誰ひとり、止めることができなかった。
花は、力ずくで、咲いてしまった。
今となっては、もう、遅い。

                       山田リオ


花朽ちて沈みてゆきし野の井戸の無明無限の水深想ふ
       
           河野 裕子(1946 - 2010

2019年3月25日月曜日

花冷え


花冷えの箸まなかつをむしりけり

花冷えのマスクをかけて眉の濃き

花冷えの閉めてしんかんたる障子

花冷えの打つだけの手はうちにけり

花冷えの雨にならんとしてなれず

          久保田万太郎(1890-1963)

2019年3月23日土曜日

花冷え


花冷のなにゆゑとなき昼の酒

            藤田湘子(1926 - 2005)

2019年3月21日木曜日

円空

rio yamada photo

遊ぶらん浮世の人は花なれや春の始めの鶯の声

            円空(1632-1695)

2019年3月20日水曜日


この坂を登れば夏が来そうな


       住宅顕信(1961 - 1987)

2019年3月15日金曜日

方代


くりかえしつたうる朝の報道の事実といえど信じる勿れ

                              山崎方代(1914‐1985)

2019年3月14日木曜日

      
       (略)

ウラディミール: ズボンを穿けよ。

エストラゴン:  なんだって?

ウラディミール: ズボンを穿けって。

エストラゴン:  ズボンを脱げって言うのか?

ウラディミール: ズボンを穿け。

エストラゴン: (ズボンが落ちていることに気が付              いて)
         そうだな。
        (ズボンを引き上げる)

ウラディミール: さてと。行くか?

エストラゴン:  ああ。行こう。
        (二人とも、動かない)
        
             幕

 (サミュエル・ベケット「ゴドーを待ちながら」より)  
                 訳:山田リオ

2019年3月12日火曜日

2019年3月10日日曜日

未来


「わたしは 未来に興味がある
なぜなら そこは わたしがこれからの人生を過ごす場所だから」

             ウディー・アレン(1935 ~)

2019年3月7日木曜日

rio yamada photo
             山田リオ                              
 いろりのそばに横たわって
火が燃えるのをみつめている
火の あたたかい色だけを見て
炭がはぜる音を聴いている
何も考えず
何も思わず
火を見ている

縄文人も こんなふうに
夜のなかで 火を見ていたんだろう
なにも考えず
なにも思わず
じっと
火を見ていたんだろう
      Copyright ©2019RioYamada

2019年3月2日土曜日

花にまだ間のある雨に濡れにけり

        久保田万太郎

2019年3月1日金曜日

数式


やはらかいレンズがたくさん浮いてゐる空のすみから春がはじまる

開いたら袋の中で割れてゐる鳩サブレーのまるいおなかが

コーヒーの香りをデスクに置いたまま朝までひとりの余白に眠る

                                    
                   大西久美子

           (「イーハト-ブの数式」より)