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あきらめは天辺の禿のみならず屋台の隅で飲んでいる
まっ黒いさくらの花がぽたぽたと散りあらそへり瞳(め)は盲いてゆく
なるようになってしもうたようである穴がせまくて引き返せない
新聞紙に腰をおろしてからっぽの頭の先を陽に干している
人間はかくの如くにかなしくてあとふりむけば物落ちている
鬼のようにしゃがんでいるとまた一つ銀杏の実が土を鳴らせり
もう何も申し上げません夜は早く灯を消して眠るにしかず
こともなくわが指先につぶされしこの赤蟻の死はすばらしい
耳もとでささやいているずっしりと小屋を囲んで雪が止んでいる
日が昇って来るなりこくいっこくのせまり来る死ぞ
山崎方代(1914-1985)