2021年1月31日日曜日

人生

 人生については、あまり真面目に考えないことだ。

どうせ、生きては出られないんだから。

           エルバート・ハバード (1856~1915)  山田リオ訳



2021年1月28日木曜日

可楽

■2011/04/01 (金) 

*海棠や悩みなき日のつづきけり

夕月や青田をわたる風の色

片耳はコオロギに貸す枕かな

枯蓮に師走の水の動かざる

さりながら死にたくもなし年の暮
                   七代目三笑亭可楽(1886~1944)

                      海棠(かいどう)



2021年1月27日水曜日

仲間 2006

■2006/07/02 (日) 蜂
(All rights reserved 、2006Rio Yamada

                      山田リオ


静かだったあの町の 家の小さな庭に 

蜂が来るようになった

スズメバチが 最初の常連で

アシナガバチも 来るようになった

毎朝 水を飲みに来るのだ

なにしろ ここは砂漠の町なので

すべてが乾燥している

わたしが 朝 野菜に水遣りをするのを知っていて

その時を 待っているのだ

庭に出ていくと すぐに翔んで来て

頭のまわりを ぐるぐる翔び回る

スズメバチも 知り合いだから 安心だ


一通り ホースで水をまいて

レンガや 塀にも 打ち水をする

蜂は バジルの苗がお気に入りで

水玉が光るバジルの葉にとまって

ゆっくり 水を飲んでから

垂直に上昇して どこかに翔んでゆく

帽子をかぶって リュックを持って

仕事に出かける時でも おかまいなしに

耳のそばで あの蜂の声で

「水をくださいいいいいい」と言うから

急いで出かける時だって

やっぱり 水をあげないわけにはいかない


子供のころから 昆虫や鳥とは 深いつきあいだった

複雑でやっかいな 人間とのつきあいより

それは はるかに心安らぐものだから

ある意味 彼らは ほんとうの友人とも言える

でも 今になって あの頃を振り返って 思う  

あの 砂漠の町の 人間ではないご近所さんたちは

残された 命の時間を 共に生きる彼らは 

わたしにとって かけがえのない 仲間だ 

Copyright ©2006RioYamada

2021年1月22日金曜日

 なき人のかたみにたてし寺に入りて跡ありけりと見て帰りぬる 

                       西行法師(1118~1190)

2021年1月21日木曜日

 白砂をひかりのような船がゆきなんてしずかな私だろうか

             笹井 宏之(1982~2009)


2021年1月16日土曜日

背後

 第155段(略)死期は序でを待たず。死は前よりしも来らず、予て、後ろに迫れり。人皆、死有ることを知りて、待つ事、しかも急ならざるに、覚えずして来たる。沖の干潟、遥かなれども、磯より潮の滿つるが如し。

(死は、順番では来ない。死は前からは来ない。気がつく前に、背後から忍び寄る。みんなは死について知ってはいても、すぐに来るとは思わないで、のんびりしている。しかし、死は、知らないうちに、もう、すぐそこまで来ている。干潟がずっと遠くまで見通せているせいで、足元に潮が満ちて来ているのに気がつかないのと同じだ。)

               徒然草より、吉田兼好(鎌倉時代末期〜)


2021年1月14日木曜日

わが家の犬はいづこにゆきぬらむ今宵も思ひいでて眠れる

                  島木赤彦



2021年1月8日金曜日

 

2016年6月29日水曜日




              山田リオ



最近、思うんだけど、
人一人の生命と、蟲一匹の生命は、同じ重さなのか。

どれほどの名声を残そうと、どんなに大きなビルを建てようと、
全巻96冊の作品全集を残して逝こうが、
死んでいく時には、わたしたちは何一つ持っては行けない。
燃えるゴミか、燃えないゴミか、どっちかになるしかない。 
蜘蛛がどんなに立派な左右対称の巣を作っても、
夜のあいだに雨が降れば、朝にはその巣は消えている、
それと同じことだ。

猫のまわりに、猫の中に、
すごく巨きな平安を、平和を感じることがある。
木の枝で鳴いている小鳥を見ていると、小鳥のしあわせを思う。
こっちの勝手な思い込みだろうか?
壁にとまっている、いつもの蜘蛛をどんなに見ていても、
そこに何の苦しみも、葛藤も感じることができない。 
それは、こっちが鈍感なせいか?

それに比べて、わたしたちの心のなかに吹き荒れる嵐は、なにごとか。
あの蟲、鳥獣蟲魚の心の中にも、私たちと同じような暴風雨があるのか。
訊いてみないとわからないことだが、
窓の外の小鳥の答えは、おそらく明快だろうと思う。

それもこれも、すべては、こっちの思い込みか?Copyright©2016RioYamada