山田リオ
なぜぼくが
たとえば あの人の詩ばっかり
何度も何度もくりかえし 読んでいるのか
それは あの人に ある時
出会ってしまったからで
出会ってからというもの
ぼくが 生きていくなかで
いつも そばにいてくれて
ぼくが すくわれてきたからで
それは あのひとの詩 ばかりじゃないんだけど
出会ったのは だれに薦められたわけでもなく
じぶんで ひとりで
そのひとと 出会って
それから 読むたびに
つらくなったり かなしくなったり
気持ちが楽になったり たすかったり
そういうことが あってから
きがつけば また読んだり
あのひとのことを 思い出したり
つまり ああいう いくつかの言葉だけではなく
あのひとが 生きたことや なにもかもが
ぼくの いきていることの 一部になったのです
Copyright ©2018RioYamada
花の写真を撮るのは
気がすすまない
でもなぜか
撮った
この時期は
気持ちが沈むから
それでかな
花芙蓉
花の俳句も
あまり好きじゃない
夏の海も
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■2004/12/16 (木) 昆虫
山田リオ
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| ハンミョウ |
わたしは、昆虫になりたい
本能という神によってプログラムされ入力された手順に従って
考えることなく、しかし間違いなく設計図のままに行動し
孵化し、脱皮し、変態し、食い、交尾し、繁殖し
短い生をまっすぐに生きて確実に死んでゆく
そういう昆虫になりたい
朝露に濡れた草むらに住むセスジツユムシでもいい
ルビーやエメラルドのブローチのようなハンミョウもいい
水辺の妖精のようなクロイトトンボも
青い空をその体に写し取ったようなヤマトシジミもいい
金色と緑に輝くコガネムシでもいい
昆虫はあまり頭は良くないから
明日の生活の心配で眠れない夜を過ごすこともなく
死への恐怖をながながと想像して苦しむこともない
まわりの虫たちが自分をどう思っているかなど考えたこともなく
ただ、愚かに、今日を生きる
昆虫は過去の記憶をたどることもないから
失敗や失望や裏切りや恨みを疲れ果てた牛のように
何度も何度も胃から吐き戻してまた噛み砕き味わうこともなく
誰が良い虫で正しく、誰が悪い虫で間違っているかなどわからない
餌になる虫が来れば殺して、食う。ただ、生きるために。
短い一生をすこしも疑うことも迷うこともなく
後悔も不満も嫉妬も優越感も成功も失敗もなく
愚直に、しかし全力で、まっすぐに
あっという間に走り抜ける
あの昆虫になれたら。 Copyright ©2004RioYamada
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| ムラサキシジミ |
完璧な 無私
蝶は
自分が 美しいことを
知らない
ただ 林の中に消えて行く
ジャック・ケルアック(1922 – 1969)
訳:山田リオ
一日物云はず蝶の影さす
尾崎放哉(1885-1926)
(おざきほうさい、無季自由律俳句)
どっちみち梅雨の道へ出る地下道
池田澄子(1936~)
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タカラモノ。
写真は、子供の頃、祖父に貰ったガラスの文鎮です。
直径、約6cm。
祖父が何時、どこで手に入れたかは知りません。 やまだ
須耐煩書
「須く煩に耐うべし」(すべからくはんにたうべし)
「面倒なことでも、我慢してやりなさい」
大正十年一月 八十六歳
鐡齊錬 (富岡鉄斎 1837-1924)
蜘蛛もだまって居る私もだまって居る
尾崎放哉(1885-1926)