2016年6月29日水曜日
嵐
最近、思うんだけど、
人一人の生命と、蟲一匹の生命は、同じ重さじゃないのか。
どれほどの名声を残そうと、どんなに大きなビルを建てようと、
全巻96冊の作品全集を残して逝こうが、
死んでいく時には、わたしたちは何一つ持っては行けない。
燃えるゴミか、燃えないゴミか、どっちかになるしかない。
蜘蛛がどんなに立派な左右対称の巣を作っても、
夜のあいだに雨が降れば、朝にはその巣は消えている、
それと同じことだ。
猫のまわりに、猫の中に、
すごく巨きな平安を、平和を感じることがある。
木の枝で鳴いている小鳥を見ていると、小鳥のしあわせを思う。
こっちの勝手な思い込みだろうか?
壁にとまっている、いつもの蜘蛛をどんなに見ていても、
そこに何の苦しみも、葛藤も感じることができない。
それは、こっちが鈍感なせいか?
それに比べて、わたしたちの心のなかに吹き荒れる嵐は、なにごとか。
あの蟲、鳥獣蟲魚の心の中にも、私たちと同じような暴風雨があるのか。
訊いてみないとわからないことだが、
窓の外の小鳥の答えは、おそらく明快だろうと思う。
それもこれも、すべては、こっちの思い込みか?Copyright©2016RioYamada
2016年6月24日金曜日
いぬのおまわりさん
さとうよしみ作詞・大中恩作曲
まいごのまいごの こねこちゃん
あなたのおうちは どこですか
おうちをきいても わからない
なまえをきいても わからない
ニャンニャン ニャニャン
ニャンニャン ニャニャン
ないてばかりいる こねこちゃん
いぬのおまわりさん こまってしまって
ワンワンワワン ワンワンワワン
まいごのまいごの こねこちゃん
このこのおうちは どこですか
からすにきいても わからない
すずめにきいても わからない
ニャンニャン ニャニャン
ニャンニャン ニャニャン
ないてばかりいる こねこちゃん
いぬのおまわりさん こまってしまって
ワンワンワワン ワンワンワワン
2016年6月22日水曜日
2016年6月6日月曜日
2016年6月2日木曜日
かふぇ・こん・れちぇ 2000
きみは 神様から跳び蹴りをもらったことがある?
ぼくは あるんだ
あのときは 気がつかなかったんだけど
あとで思ったら あのときの あれって
きっと 飛び蹴りだったんだな と思う
ずっとまえ 二月の 雪の降る日暮れ
ぼくは マンハッタン島の先っぽの
雪の積もり始めた道を 歩いていた
その時 ぼくはたぶん 小さかったころの
あの冬のことを 思い出していたんだろう
あの日 いじめられたぼくは 今みたいに
雪じゃなくて 雨が降る夕暮れの街を
口の中で なにか言いながら歩いていた
あの日 頭の中でぐるぐる考えていたことを
今も同じように ぐるぐるぐるぐる考えながら
雪の道を歩いていると 今 歩いているのは
大人になった自分で そのなさけない自分を
ぼくは 許すことができなくて
それは ずっと 変わらなくて
ずいぶん歩いてから思った 寒い
雪は さっきよりも激しくなっていて
ぼくは 小さい 古い 食堂の
湯気で曇った ガラス窓の前にいて
店の中は 明るくて 暖かそうだった
何かに背中を押されて 店の中に入る
脂で汚れたカウンター テーブルが二つ
目に前の カウンターの椅子に腰掛ける
湯気の中から現れた 大きな人 それは
中南米のオーラを放つ 「母」だった
「母」は でっかい声でぼくに言った
「スープ!?」
ぼくは 小さい声で答えた 「すーぷ。」
黙って スープを待っていると
少しだけ 手指が暖まってくる
あっという間に「母」は 戻ってきた
スープ皿に 盛り上がっている「スープ」が
大きな手で カウンターに置かれる
それは 溶けかかったジャガイモ 玉ネギ
ニンジン 肉が 骨から離れ始めた 鶏肉
それらが 皿に溢れ 湯気を上げている
中南米の労働者が 米飯と食べる 食事
飯を スープに入れ 肉や芋と飯を混ぜ
黙って 喰う
砂漠を彷徨ったあげく 生還した人のように
ぼくは スープを喰った
食べ終わって 一息つく 体があたたまって
汗といっしょに 少し 涙も流れていたので
紙ナプキンで拭いて 冷たい水を呑む
身体の奥の方に 力が戻ってきている
跳び蹴りのダメージから回復してきたのだ
その時 ぼくは思った
「カフェ・コン・レチェが飲みたい。」
カフェ・コン・レチェ それは
鼻と 舌と 胃袋に 強烈に響く あれ
中南米が世界に誇る 濃厚なコーヒーに
脂肪分の多い 熱々のミルクを合わせた
あの カフェ・コン・レチェの力があれば
きっと ぼくはまた 立ち上がって戦える
そう思った時 「母」が再び カウンターの向こうに現れて
でっかい声でぼくに言った。「カフェ・コン・レチェ?!」
ぼくは でっかい声で答えた。 「かふぇ・こん・れちぇ!」