2019年12月17日火曜日

ノスタルジア

rio yamada photo

不思議な心の痛み
懐かしさのあまり 死ぬということ
まだ見ぬものを 決して経験しえないことを
懐かしみ あこがれるあまり
死ぬ ということ

     アレッサンドロ・バリッコ(1958~)
                                                 訳:山田リオ

2019年12月11日水曜日

朝


夢の戸を閉め忘れたる朝と思ふ 筆立てに筆いつぽんもなし

           笹井宏之(1982~2009)

Keiji I. photo

2019年12月8日日曜日

石焼き芋

rio yamada photo

遠くから
焼き芋売りのおじさんの 声が聞こえたので
外に出て 走って追いかけて追いついて
路上で すこし立ち話をしてから
焼き芋を買った 小雨の降る寒い晩
熱い熱い焼き芋 うれしい焼き芋を
うす茶色の紙で 包んでくれる
それを持って 走って家に帰るまでに
両手だけは あたたかくなった
でも 耳も顔も まだつめたい
急いで食べよう 今すぐ食べよう
あたたかい 焼き芋

         山田リオ

無言

rio yamada

今日一日だけは
無言で暮らそう
誰にも会わない
空気を読まない
世間話もしない
そういうふうに
静かに暮らそう
今日だけでいい
それができたら
どんなにいいか

        山田リオ

2019年12月2日月曜日

憂慮

「年齢なんて無意味だ。ただし、あなたがチーズなら別だが。」

「アペリティフ(食前酒)の衰退は、われわれの時代における最も憂慮すべき現象だ。」

         ルイス・ブニュエル(1900~1983)      翻訳:山田リオ 
Rio Yamada

全部

rio yamada photo

私はここに、私が知らないことを
すべて、ひとつ残らず持っている。
ひとつも、なくしてはいないんだ。

      W.S.マーウィン(1927~2019)

2019年12月1日日曜日

柘榴

rio yamada photo
雨の朝 
ざくろを割ってみた
いい感じに 熟れている
食べてみた
一粒づつ 指でつまんで 口に入れる
甘さ 酸っぱさ 朝の冷たさ 秋の味
ただ この作業は 止まらなくなる
次から次に ひとつぶ ひと粒 
食べて 味わって 種を出し またつまむ
やめられないのが 困ります
そのうえ 深紅の粒々をつまんだ指先が
黒くなるのも困ります    

           山田リオ

2019年11月30日土曜日

小舟

rio yamada photo

どこまでも流れ下って行く
金色の光の中を漂いながら
人生が夢でないのなら 何?

 「鏡の中のアリス」より 山田リオ訳
  ルイス・キャロル(1832~1898) 

*******************************
「鏡」の最後の最後の三行です。

アリスは、いわゆる童話とは別の物だと思います。
子供向きに簡略化してはいけないし、もちろん、アニメにした物は、最も大切な部分が失われてしまっています。
そして、「不思議の国のアリス」も、「鏡の国のアリス」も、機会があったら原作を、英語で読んでいただけたら、と心から思います。 やまだ

2019年11月29日金曜日

夏

Estate (夏)
      ブルーノ・ブリゲッティ(イタリア) 翻訳:山田リオ

rio yamada photo
夏は 過ぎ去った口付けのように熱く
なくしてしまった恋でいっぱいだ
もう なにもかも忘れてしまいたい 夏

私たちをあたためてくれた 夏
それは素晴らしい夕日をもたらし
今はただ わたしを激しく焼く

やがて冬がめぐって来て
無数のバラの花びらは散り
雪がすべてをおおいつくして
束の間の平和を与えてくれる

花々に香りをもたらした 夏
私たちの恋を創造してくれた 夏
あの素晴らしい夏が去った今
残されたのは 心の痛みだけ

************************
イタリア人のブルーノ・ブリゲッティが作詞した「夏」は、
ブラジル人のジョアン・ジウベルトが歌って有名になりました。どうも、知らない言葉が多いなあ、と思ったら、ポルトガル語ではなく、イタリア語だったわけです。
イタリア語の歌詞をそのまま歌ったということで、ブラジルでは珍しい歌です。 山田

2019年11月25日月曜日

まぼろし

   (イルザオン・トア)
      詩:アウフレド・ジョセ・シウヴァ(ブラジル)訳:山田リオ

見てごらん あなたの眼から たった一日分の距離
ほんの少しの差で わたしは 愛を失ってしまった
いまは 全世界が ひどく悲しいだけの場所だから
それでも なぜか あなたは今も すぐそばにいる
もう あの ひそかな思いなんか捨ててしまおうと
そう思い切ることができた自分に 感謝していても
そう あの たった一人に向ける ひそかな思いが
でも あなたは それに 全く気がつかないままで
あなたのまぼろしの重さに 打ちひしがれている私
  

2019年11月23日土曜日

朝露

rio yamada photo

雨と風の日々がつづいて 
やっと 陽がさしてきた 
いいことがありそうな朝

2019年11月17日日曜日

無言

rio yamada photo

人は、時には、語らなければいけない。
無言が全てを語ってしまうのを避けるために。

      ヘルタ・ミュラー(1953~)

2019年11月14日木曜日

向日葵


ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり

             永井陽子(1951~2000)
rio yamada photo

2019年11月13日水曜日

わたしの好きな

rio yamada photo
          山田リオ

今日は いい雲に出会ったので
コレクションに加えた
好きな雲が すぐに消えてしまう雲が
これで 手元に残せる

好きなクラシックの演奏家の録音を
今日もまた 再生して 聴いている
それは 静かで ゆるやかなので
聴けば しばらくは幸福になれる
いつでも 何度でも 幸福になれる

前から好きだと思っていた画家
世間では あまり人気のない画家
でも その人の描いた 絵を見つけて
何度も出してきて 見ている
見るたびに 心がいっぱいになって 
うれしくて 笑顔になってしまう

2019年11月12日火曜日

つわぶきの花


いくたびか時雨のあめのかかりたる
石蕗の花もつひに終わりぬ

       斎藤茂吉(1882~1953)

                                 時雨 (しぐれ)
        石蕗 (つわぶき)

2019年11月7日木曜日

茂吉


うつしみはついに悲しとおもへども
迫り来ひとのいのちの悲しさ

          斎藤茂吉(1882~1953)

2019年11月6日水曜日

初霜


門の辺の八つ手の霜を思ふかな

かどのべのやつでのしもをおもうかな

       久保田万太郎(1889~1963)


 

2019年11月5日火曜日

海


さあここであなたは海になりなさい
鞄は持っていてあげるから

         笹井宏之(1982~2009)

2019年11月3日日曜日

光る海

           山田リオ
rio yamada

海に出て行くというとき
豪華客船を選ぶ人がいる
決して沈まない そのまま一生 
安全安定の 船で行く旅

一方 少し大きな波が来たら
すぐに沈んでしまいそうな 小舟
そういう舟で 海に出る
そんな航海も ある

運悪く 小舟が転覆した時には
また別の小舟を見つけ 旅を続ける
毎日が冒険 明日はどうなるか わからない
でも 毎日が新しくて ドキドキする旅

そして 旅の終わりが来たら
「楽しかったね」「面白かったね」
そう言って笑えるような そういう
小舟の旅を 選ぶ人もいるんだよ

2019年11月2日土曜日

猫

rio yamada photo

あの猫のことを思い出している時間

             山田リオ

2019年10月31日木曜日

笑顔

rio yamada photo

人生は笑って生きるだけでいいんです。

         関 頑亭 (1919~)

2019年10月27日日曜日

Premonition Dream 予知夢

             山田リオ
幼い頃に見た夢を
何度も 繰り返し 見ることがある
永い間 忘れていた
幼い頃の あの晩の あの夢を
ある夜 また そっくり あの時のまま 
もう一度 あらためて 見る
目覚めて ああ あの夢だった と思う
そして 今ここで 現実に起こっていることを
あの時 まえもって 見ていたのだと 気がつく
そういう夢を 今朝また 夜明け前に見た
ああ あの時の あの夢だ
そうだったのか
おしえてくれて ありがとう と
なにか わからないものに向かって 言う
でも それが いったい何の役に立ったのか
わたしは 知らない 

2019年10月26日土曜日

ただ一度

rio yamada


写真は、NY時代に録音したCDアルバムのジャケットの一部です。思い出深いものなので、ここに入れておこうと思います。

説明するのもヤボですが、この四色のデザインは、もちろん、ブラジル、アメリカ、日本、三ヶ国の国旗を意識したものになっております。

全八曲、すべて僕のオリジナル曲ですが、NYのジャズのミュージシャンとブラジルのサンバのミュージシャン、それに、ぼくも演奏したのですが、一発勝負で録音しました。

何しろインプロヴで、やり直しが効かないものなんで、今聞くと、かなりヤバいのもあります。

でも、あの頃、みんなでワイワイやりながらの多国籍セッションは、ホント、懐かしい。
あのメンバーが集まることは、もう不可能です。
二度とできない、やり直しがきかないこと、人生には、いっぱいありますねw。
今は・・
サウダージ。。。
                         山田
  

2019年10月22日火曜日

ここに

rio yamada photo

仏法ははるかにあらず
心中にしてすなわち近し

       空海

2019年10月18日金曜日

おはよう、胸の痛み 再録

rio yamada photo
2007/03/29
Ervin Drake(1919-2015) 作詞 訳:山田リオ

おはよう 胸の痛み
あいかわらず 暗いね
おはよう 胸の痛み
昨日の晩 さよなら言ったはずなのに
私が眠れずに 寝返り打っているうちに
あんたは 行ってしまったと思ったのに
夜が明けたら やっぱりここにいる

あんたを 忘れたいのに
あんたは ここに住み着いた
あんたに 初めて会ったのは
私の恋が 去って行った後だった
今じゃ 毎日が あんたへの挨拶で始まる
「おはよう 胸の痛み どう?」

つきまとうのを やめてほしい
でもあんたは ここにいる
一人に なりたいのに
月曜日から 憂鬱で
日曜日まで ずっと憂鬱で

おはよう 胸の痛み
また 一緒だね
あんただけだよ  私をわかってくれるのは
あんたがここにいるのに もう慣れた方がいいね
おはよう 胸の痛み 座りなよ・・・

2019年10月17日木曜日

ねむり

rio yamada photo

極上の時は
あたたかい 囲炉裏のそば
炭火のはぜる音 匂い
秋は深まる 夜は更ける
知らないうちに 眠りに落ちて
そんなふうに 一生を終われたら
どんなにか 幸せだろう

        山田リオ

2019年10月12日土曜日

祝杯の意味


Carmen McRae

誰がなんと言おうと、
今日はカーメン・マクレイを聴く。

聴いて、聴いて、聴きまくる。

そう決めたのだ。
そういう日があっても、いいのだ。

********************************

昨日今日、いろんなことがありました。
悲しいことが、たくさん、たくさんあります。
どこかの遠い町でも、すぐそばでも、
僕の年齢になってくると、
知人友人、身近な人、大切な人たちにも、
どうしたらいいかわからないほど、悲しいことが
次々に起こるようになってきます。
それが、生きているということです。
だから、せめて、何か、ほんの小さなことでも、
何か、祝えることがある時には、
祝杯をあげてもいいんじゃないか、と思いました。
たまには、ほんの小さなことでいいから、何か、祝えることがある間は、
祝杯をあげても許されるだろう、と。
そう思いました。          山田

2019年10月9日水曜日

ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記のこと

リチウムイオン電池の吉野彰さんのノーベル化学賞受賞ニュースを見ていて、宮澤賢治が1930年代に書いた「グスコーブドリの伝記」を思い出した。たしか、その中で、潮汐発電のことが書かれていたからだ。潮汐発電、太陽光発電、風力発電、そして、それら全てに必要なリチウムイオン電池、どれも、地球温暖化や環境破壊と戦うための手段なのだが、今から90年も前に、賢治は、もうすでに、そういうことを考えていたんだなあ、と思った。だから、やっぱり、賢治は賢治なんだ。

「グスコーブドリの伝記」と関連して、未完だった「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」と言う作品があって、今ではなかなか手に入らない本だが、青空文庫やKindleなどで読むことができる。これは大好きなお話なのだが、結末が書かれないままに終わっている。あるいは書かれていたが、失われたのかもしれない。
そう言えば、「ペンネンノルデは今はいないよ、太陽の棘を取りに行ったよ」と言うのもあったなあ。でも、どの作品だったのか。思い出せない。

rio yamada photo

2019年10月4日金曜日

なんだっけ

© rio yamada

道の上に 銀杏の実が落ちている
なぜか 立ち止まる
なんだか 気になる
なにか 大事なことを忘れているようで
でも 思い出せない
考えながら 銀杏の実を見下ろして
でもやっぱり 思い出せない
なんだっけ
自分は 何を忘れたんだろう

                              山田リオ 2019© rio yamada