2014年3月16日日曜日

花月の夜

徳冨蘆花(1868-1927)


戸をあくれば、十六日の月桜のにあり。空色くしてみ、白雲団々

月にきは銀の如く光り、遠きは綿の如くらかなり。
春星よりもに空をる。微茫月色、花にじて、

なる枝は月をしてほのく、
なる一枝は月にさし出でゝほの白く、風情言ひし。
き影と、き光は、落花点々たる庭に落ちて、地を歩す、ながらむのあり。
浜のを望めば、砂洲茫々として白し。何処やらに俚歌ふ声あり。     

にして雨はらはらと降りぬ。やがてまたみぬ。
春雲めて、ほの白く、桜花として無からむとす。







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