2014年10月29日水曜日

グレース・オヴ・モナコ

ごぶさたしました。久々に、映画の記事です。
Grace de Monaco、これは、フランス映画ですが、
フランス、ベルギー、イタリアなどで撮影されたそうです。

南ヨーロッパの小国、モナコの国王と結婚した、
実在の女優、グレース・ケリーの物語です。
かなり史実に忠実に作られたということです。

1950年代から、十数年間が舞台なので、
いろいろと興味深い人物が登場します。
もちろん見ていれば、「あ、あの人だ」とわかりますが、まず、言わずと知れた、アルフレッド・ヒッチコック
それからマリア・カラス、彼女はこの映画では、かなり重要な役割を持っていて、
彼女が映画の終盤に歌うアリアの歌詞が、映画の物語に重なる、そういう仕掛けになっているので、オペラ好きはこたえられません。 マリア・カラスは歌手だっただけではなくて、その、地中海的、かつ個性的な美貌で、当時は、国際的に非常に人気がありました。
それから、後にジャクリーン・ケネディーと結婚する、アリストートル・オナシス。フランスのド・ゴール大統領、そして、アメリカのマクナマラ国防長官などなど。多士済々です。

この、すんばらしい脚本を書いたのは、 Arash Amel アラシュ・アメルという人で、
ペルシャ生まれですが、小さいときに英国に移民、さらにアメリカに、という経歴の持ち主です。
従って、ヨーロッパでもアジアでも、距離を置いて、巨視的に見ることができる脚本家です。 

映画の終わり近く、モナコ王妃グレースのモノローグ、独白は、この映画の白眉です。
アラシュ・アメル渾身の、という。
ではありますが、画面下の日本語字幕を読みながら映像を見ていると、王妃の表情や姿勢から目が離れてしまうと思われ、そこが、いかにも残念です。一瞬も、眼を離したくないんですね。
独白と言うのは、そういうものです。
できれば、この独白の部分だけでも台詞を頭に入れ、それから、この場面をご覧になってくだされば、もしもそういうことが可能であれば、この場面を、より十分にお楽しみ頂けるのではないかと存じます。

この映画には、カーチェイスも、銃も暴力も、冒険も、危機一髪で命が助かったりとか、そういうことはぜーんぜん出てきません。そういう映画です。
 そして、この映画は、非常にキャスティングがよいので、困ります。
 登場する俳優さんたちは、みんなそれぞれが、現実の世界で、自分の力で人生を生きている、そういう、あたりまえの人間の顔をしています。まあ、そういう人たちを選んでキャストを決めたんでしょうね。じつにエライ映画ですw

会話や筋書きが、やや複雑ですが、おすすめの映画であります。 
ぼくは、あと三回くらい見に行く予定です。 Copyright ©2014RioYamada

2014年10月22日水曜日

秋霖



雨       尾形亀之助(1900-1942)

四日も雨だ――
それでも松の葉はとんがり

雨の祭日

雨が降ると
街はセメントの匂ひが漂ふ

雨が降る

夜の雨は音をたてゝ降つてゐる
外は暗いだらう
窓を開けても雨は止むまい
部屋の中は内から窓を閉ざしてゐる

雨日

午後になると毎日のやうに雨が降る
今日の昼もずいぶんながかつた
なんといふこともなく泣きたくさへなつてゐた

小さな庭


もはや夕暮れ近い頃である
一日中雨が降つてゐた
泣いてゐる松の木であつた

2014年10月18日土曜日

あのね


チェコ語は、ポーランド語によく似ていますので
おぼえやすいと思います

はい、は 「アノ

いいえ、は 「」  と言うそうです。



ところで 道に迷って ほんとに迷って
どうすればいいか ぜんぜん わからないときには
なにを どう 考えればいいか さえ わからなくなります 

ト、書いて、数時間。
まったく突然、
チェコではないけれど、その近くの国に住む、古い友人からのメールが。
なんと、そのメールのなかに、りっぱなドアがありましたので、
そのドアを通り抜けて、出ることができました。
ふしぎ。                                           や

2014年10月17日金曜日

時計


          山田リオ

いま使っている腕時計です
非常に気に入っています
なぜ、気に入っているかというと
この時計を見ても
時間がわからないからです
それは
この時計はこわれていて
動かないので
いつでも同じ時刻で
ずっと、ずっといつまでも
永遠に同じ時刻なので
ですから
気持ちが落ち着くし
ぼくはこの時計が
いちばん
すきなのです Copyright ©2014RioYamada

2014年10月14日火曜日

ただ憧れを知る者のみが

Nur wer die Sehnsucht kennt
    Johann Wolfgang von Goethe(1749 – 1832)


Nur wer die Sehnsucht kennt
Weiß, was ich leide!
Allein und abgetrennt
Von aller Freude,
Seh ich ans Firmament
Nach jener Seite.

Ach! der mich liebt und kennt,
Ist in der Weite.
Es schwindelt mir, es brennt
Mein Eingeweide.
Nur wer die Sehnsucht kennt
Weiß, was ich leide!

ただ憧れを知る者のみが
    ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(ドイツ)

                                訳:山田リオ
ただ憧れを知る者のみが
この悲しみを理解する
一人、喜びを遠く離れて
空を見る、空の後ろの向こう側を

ああ、私を愛し、そして知る
その人は今、遥かに遠く
わたしの中には眩暈と炎
ただ憧れを知る者のみが
この悲しみを理解する
 
                        Copyright ©2014RioYamada
 

2014年10月13日月曜日

あけび

アケビ

          山田リオ
                                Copyright ©2014RioYamada

目が覚めたとき
聞こえる鳥の歌が
ある朝から、新しくなりました
シジュウカラは前からいますが
新しいメンバーは、カワラヒワ
それから、ジョウビタキ
よくわからない鳥の歌も聞こえます                      秋になると、鳥は移動しますから
街に、新しい小鳥がやってきます
早朝の鳥の歌を聞くだけで
季節が巡っているのが
わかります

近所のお宅の庭では
山の中にあるはずの
あけびの実が
みごとに実りました
でも、だれも取りません
あの甘い甘い実を、だれも食べません
カラスだって食べようとしないのは
なぜだか、わかりません
甘いまま、誰も触れないまま
冬がやってくるのかもしれません    Copyright ©2014RioYamada

2014年10月11日土曜日

A Reminder


あの数日間、言われたことを、そのままノートに書いておいた
そしてぜんぶの言葉を忘れないようにと、あのころは強く念じていたのですが
のどもと過ぎればなんとやら、しょっちゅう忘れるようになったので
こうやってここに書いておけば、自分の眼にはいるだろうし
すくなくともしばらくの間は効き目があるんじゃないだろうかと
いうわけで、あのことを忘れるなよ、おまえ、とここに
書いておく。忘れるなよ、おまえ

2014年10月10日金曜日

あなたのまなざし

ユーカリプタス

Este Seu Olhar あなたのまなざし 
                  トム・ジョビン(ブラジル)

                  訳:山田リオCopyright ©2014RioYamada

あなたの まなざしと 
わたしの まなざしが 出会うとき
信じられない ことが 語られる
わたしが あなたを 思うように
あなたも また わたしの ことを
そんな わたしの 甘い夢

でも 錯覚の 魔法が 解けたとき
あまりにも 大きな 夢を見た 
わたしの 心に 痛みだけが 残る
あなたの まなざしは いったい 
何を 語るのか
 
                Copyright ©2014RioYamada


(ひさしぶりに、アウスィオーニの歌を聴こうと思って、音楽ファイルを開いたら、
いきなり聞こえたのが、この「エスチ・セウ・オリャー」だったので、訳してみました やまだ)

2014年10月8日水曜日

水のなか


          山田リオCopyright ©2014RioYamada
 さっき まで
上に あった 空
空に あった 雲
むこうに あった 森   

いまは もう みんな
睡蓮の 下
水面の 下
アメンボの 下
なにも かも 水の なか

いま そこに ある
手を 伸ばすと さわれる 

水の なかの 雲
水の したの 空
水の そこの 森

みんな ほんとう 
ほんとうの 雲は
ほんとうの 空は
ほんとうの 森は
あなたが なんと 言おうが
水の なかに あります 
                   Copyright ©2014RioYamada

(ところで、アメンボですが、じつにみごとに整列してるじゃありませんか。  や)